教育の場に政治介入や業者の利権がらみの教科書選定があってはならない。年内最後のコラムとして、この問題を取り上げた。教科書を巡る不適切行為を行った業者や教諭に対しては処分を厳しく行うことを求めたい。
大手・三省堂は平成21年から昨年までに小中学校の校長ら集めた「編集会議」を催し、教科書採択検定途中の自社の教科書を見せ、現金5万円を渡したほか、懇親会費や二次会飲食費まで自社持ちし、教科書採択への信用を大きく失墜させた。読者の記憶にも新しいだろう。
三省堂はこの問題で、今月、「今後は教科書に学校現場の意見を反映させる目的で今回問題となったような『編集会議』を開催することは一切やめる」とした。当然だ。
あわせて「採択の公正性・透明性を損なわない形態・時期での意見聴取方法を採用する」と発表した。
三省堂は(1)意見聴取の際に編集手当という名目で謝礼を支払うことをやめる。(2)謝礼については内規を作成し、依頼内容に見合った適正な額を設定する。(3)教科書編集以外の側面においても学校関係者との関わりにおいては教科書採択に何らかの形で関与し得る利害関係者であるとの認識に立って、採択の公正性・透明性に疑念を抱かれない形で業務を遂行する。
(4)改訂される教科書協会の『教科書宣伝行動基準』を踏まえた上で、教科書の編集、営業・宣伝活動の細部にわたる社内行動規範を作成する。(5)コンプライアンスと社内ガバナンスの徹底について社外の弁護士、コンサルタント等の助力も得て、確実な課題遂行を行っていく、と表明。確実な実践をお願いしたい。
一方、三省堂から現金5万円を受け取った校長ら53人のうち21人は教科書採択に関わっていたことが分かっているという。これら校長の言動が教科書採択に影響を与えた可能性も否定できないだろうから、徹底した調査が文部科学省には求められている。現在、文部科学省で調査中ということなので、その結果を包み隠さず、国民に公表頂くことを期待する。
今回の問題を受けて、教科書出版の40社(正会員39社、准会員1社)でつくる「教科書協会」の佐々木秀樹会長(日本文教出版社長)は営業活動自主ルールの厳格化を文部科学省に報告した。
報告では(1)検定中の教科書の管理を徹底し、社員も簡単に閲覧できないようにする(2)教科書検定や採択の期間中は教員などに意見を聞くのを禁じる(3)教科書執筆などの対価以外は金銭提供、接待は一切禁止する、というものだ。
こんなルールはすでにあってしかるべきレベルものだが、さらに再発防止に「ルール違反業者を教科書協会から除名するほか、『教科書検定対象から当該書籍を外す』厳しさが必要だ」。
あわせて、こうしたルールを学校校長ら教育関係者に周知徹底するとともに、校長らが関与した場合、懲戒処分(免職または降任、半年以上の休職処分)にする厳しさが妥当だろう。教科書検定や採択はそれほど厳格に行われるべき性質のものであるということを教育者・教科書業者は深く自覚すべきだろう。(編集担当:森高龍二)