ダイハツ完全子会社化だけでは終わらない? トヨタの飽くなき野望

2016年02月01日 08:42

 トヨタの世界征服計画は新興諸国にも触手を伸ばし始めた。トヨタ自動車は29日、すでに51.2%の株式を持っていた子会社のダイハツ工業を8月1日付けで完全子会社化すると発表した。小型車の新興国への売り込みを強化することが大きな目的。一方で、トヨタは同じ分野でスズキとの提携も視野に入れているとされる。ガリバーの拡大欲はどこまで膨らむのか、世界の注目を集めている。

 トヨタは1967年にダイハツと業務提携し、98年には株式の過半数を取得して子会社化した。以来、小型車の共同開発や生産委託などの面で良好な関係を築いてきた。ダイハツの完全子会社化は、トヨタが保有する自社株をダイハツ株主に割り当てる株式交換方式が取られ、ダイハツは上場廃止になる。交換比率はトヨタ株1に対してダイハツ株0.26。軽自動車などでのダイハツブランドは存続する。

 両社が掲げる具体的な戦略は、小型車部門で「ダイハツが主体となってこれまで培った顧客目線に立ったクルマづくりや商品企画・技術開発のノウハウ・プロセスをさらに進化させ、小型車領域での両ブランドの商品を開発」(発表資料より抜粋、以下同)すること、事業戦略としては「新興国おいてダイハツが主体となって開発・調達・生産をスピーディかつ効率的に推進し、国内ではトヨタの販売ノウハウやインフラを活用したダイハツの収益力の向上」を掲げている。

 両社の狙いは何か。ダイハツは日本の軽自動車販売では首位だが、先進技術開発や市場拡大でトヨタの援助を全面的に受けたいということでわかりやすい。一方、トヨタは、2015年の世界販売台数(ダイハツ工業、日野自動車含む)で4年連続の世界首位を守ったものの、侵攻が思うように進まない東南アジアなど新興国へのてこ入れを図りたいということだ。低価格・低燃費の小型車は新興国でも需要が期待できるが、トヨタは日本や米国では高いシェアを誇るものの、新興国では後手を踏んでいる。ダイハツを完全子会社化することで小型車のグローバル戦略を一本化し、ダイハツの商品企画や低コスト生産などと、トヨタの環境・安全技術などを合わせて競争力としたい考えだ。

 トヨタの豊田章男社長は「私たちは、北米市場向けなどのミドルクラス以上を中心としたクルマづくりや環境技術をはじめとした先端技術開発は比較的得意としているが、小型車においてはそこまでの存在感を示せていない。小型車のノウハウを今以上に得ていかなければ、将来に向けたブレークスルーができないと痛感している」と話した。また、ダイハツの三井正則社長は「社内組織のスリム化など、事業構造改革に一定の目処がつきつつあり、トヨタとの関係をより強固にすることで、今後の「ダイハツの成長」、「ダイハツブランドの世界基準への進化」に踏み出していきたい」とコメントの中にもダイハツブランドへのこだわりを示した。

 一方、トヨタの小型車戦略として、この発表の数日前に一般紙がそろってスズキとの提携交渉を報じた。スズキは、これまでに米ゼネラルモータース(GM)、独フォルクスワーゲン(VW)と提携しながら解消に至った過去がある。こちらの“交際”の行方にも注目したい。(編集担当:城西泰)