トヨタ<7203>が次世代生産ラインの開発に着手した。水素発電と太陽光発電などを組み合わせ、二酸化炭素(CO2)を排出しない「ハイブリッド工場」を世界に拡げたいとしている。実装実験は世界初の量産燃料電池車(FCV)「ミライ」を組み立てている元町工場(愛知県豊田市)にて、2020年に開始される。FCV開発で蓄積した技術が活かされるであろう。
水素は工場内の空調や、塗装工程の乾燥炉の熱源などに使われる。水素で発電する燃料電池の設置と併せて、再生可能エネルギーも活用。敷地内の太陽光発電、さらに田原工場(愛知県田原市)で整備を進める風力発電の余剰電力を送電する計画だ。
水素は正しい使い方をすれば、他のエネルギーと同様に安全だとされている。ミライは強度と耐久性に優れた信頼性の高い高圧水素タンクが採用され、水素を漏らさない設計だ。水素漏れや衝突を検知すると、タンクバルブを遮断する機能もある。
水素は酸素と結びつくことで発電する。化石燃料とは異なり、エネルギーとして使用した際にCO2が出ない。現在は水素を製造する過程でCO2が排出されているが、太陽光や風力などの再生可能エネルギーで効率的な水素の製造が可能になれば、CO2排出量を大幅に削減できると言われている。将来的にCO2を一切出さずに水素エネルギーを活用できるよう、実現への取り組みが既に始まっている。
また、水素はバイオマスや下水汚泥などの様々な物質から取り出すことができ、ほぼ無限につくり出せる。さらに、水素を保存しておけば別の場所でエネルギーとして使えるという”溜めて運べる”点も水素が注目される理由の一つだ。
国も水素社会実現を推進しており、様々な自治体で水素をエネルギーとして活用するための検討がされている。FCバスや家庭用燃料電池、水素発電所など、水素をみんなのエネルギーとして使っていけるスタートラインに立ったと言えよう。
だが、課題もある。水素は原油や液化石油ガスなどと比べて燃料コストが高く、再生エネルギーは天候に大きく左右される。トヨタはそれぞれのエネルギーを組み合わせることで欠点を補いたいとしている。(編集担当:久保田雄城)