ロボットタクシーに市民が乗車へ 高齢化社会の光となるか?

2016年02月03日 08:14

画・ロホ_ットタクシーに市民か_乗車へ 高齢化社会の光となるか?

タクシーの運転手には話題が豊富で、雑談上手な人が多い。好き嫌いはあるだろうがそれを大切なコミュニケーションの場ととらえている人もいるだろう。抜け道や渋滞傾向の把握や客のニースに応じた運転の緩急など、生身の人間だからこそ成立しているサービスも多い。

 神奈川県藤沢市で2月から、自動運転技術を搭載したロボットタクシーの実証実験が始まる。登録されたモニターがパソコンやスマートフォンで配車予約すると、ロボットタクシーが自宅まで迎えに来てショッピングセンターまで送迎する仕組みだ。主導するディー・エヌ・エー<2432>とロボットベンチャー・ZMPの合弁会社「ロボットタクシー」は、これにより安全性や利用者の利便性を検証するとしている。

 タクシーはトヨタ<7203>のミニバン「エスティマ」2台。自動運転の走行区間は北部バスロータリーとイオン藤沢店の約2.4キロ区間と決められており、運転手とオペレーターは同乗している。実験は2月29日から3月11日までの予定だ。

 これに先立ち15年の10月に横浜スタジアムで行われた会見では、黒岩祐治神奈川県知事や小泉進次郎内閣府大臣政務官(当時)が「神奈川県を自動運転の実験の場に」と積極的な姿勢をみせた。翌日同所で行われたプロ野球のDeNA-巨人戦の始球式では、小泉氏が「Robot Taxi」とペイントされたエスティマに乗ってグラウンドに登場。ハンドルに触れることなく観客へ両手を振ることで自動運転をアピールする力の入れようだった。

 これまでも国内外の自動車メーカーやIT企業が公道上で無人走行に向けた実験をたびたび行っている。しかし一般の利用者が乗車できる形で実施されるのは非常に珍しい。神奈川県は14年に国家戦略特別区域として指定されており、このプロジェクトの一環として完全自動運転の実現も目標にしていることから、今回の実証実験につながった背景がある。

 しかし市民からは「怖くて乗れない」「万が一事故が起きたときの補償は」と不安の声が絶えない。また「高齢者の移動という生活インフラに〝人とのコミュニケーション〟は必要な要素だ」という指摘もある。

 そして最大のハードルは国連で決められた「道路交通に関する条約(ジュネーブ条約)」だ。この条約では運転者の不在が認められていない。小泉氏は「ジュネーブ条約改正に動けば、日本の道路交通法を変えることができる」と熱意をみせるが、そう簡単にいくものではない。

 奇しくも年明けからバスの事故が相次ぎ、業界が抱える慢性的な運転手不足と待遇の悪さが明るみになった。少子高齢化がますます進む今後、ロボットタクシーは運輸業界の救世主となるのか。まだまだ道のりは険しく、長そうである。(編集担当:久保田雄城)