筑波大学発のベンチャー企業、サイバーダイン<7779>が開発したロボットスーツ「HAL医療用下肢タイプ」が、2015年11月に厚生労働省から希少疾病用医療機器として製造・販売の承認を受け、今年1月27日には中央社会保険医療協議会が保険適用を決定した。
装着型ロボットが医療機器に承認されたのは日本では初めてだが、医療用HALはすでに欧州を中心に海外で利用されている。2013年にはEUで医療機器として承認され、ドイツでは公的労災保険の適用を受けている。アメリカでも医療機器の申請が行われ、16年春に承認される見込みだ。
医療用HALは体に装着して歩行機能を高める装置である。人間の脳、脊髄、運動神経を通して筋肉に伝わる生体電位信号を読み取り、装着者の意思に従って動く。HALと人体が一体的に動作し、「歩けた」という感覚を脳にフィードバックすることで、脳・神経・筋系の機能改善ループを促すという。歩行を補助する福祉用HALよりも性能が高く、病院での治療に使用できる。
対象疾患は、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、シャルコー・マリー・トゥース病、筋ジストロフィー、遠位型ミオパチー、先天性ミオパチー、封入体筋炎の8つで、推定適用患者数は3,400人としている。
サイバーダインの山海嘉之社長は厚生労働省での会見で「子供用モデルの開発や脊髄損傷、脳卒中などほかの病気への拡大を検討する」と発表した。山海氏は筑波大学大学院システム情報工学研究科教授で、1987年に同大学院工学研究科博士課程を修了し、ロボット研究者となった。「科学は人の役に立ってこそ意味がある。現場で使えるロボットをつくる」と決意したという。そしてHALは四世紀半をかけて開発された。
他に、重たいものを扱う際に腰にかかる負担を軽減する「HAL作業支援用(腰タイプ)」もある。ゼネコンの大林組<1802>が開発を依頼し、14年10月から使用を開始した。大和ハウス工業<1925>も15年5月から建設現場で導入。医療福祉の分野にとどまらず活躍の幅を広げている。(編集担当:久保田雄城)