「誇り高き高齢期を過ごす」住まいとは

2014年11月14日 08:55

 住宅最大手の積水ハウス<1928>は2014年11月7日、高齢者向けの上質で安全・安心な賃貸住宅「サービス付き高齢者向け住宅」、いわゆるサ高住の運営と管理を専門に扱う新会社「積和グランドマスト株式会社」を設立した。

 急速に高齢化が進む日本社会において、高齢者向け住宅の充実が求められているが、豊かさや便利さに慣れ親しんだ団塊世代などが満足できる水準の高齢者向け住宅は、まだまだ少ないのが現状だ。福祉施設型の物件は、そこそこ自立した生活が送れるものの、余暇も交友もレジャーも楽しみたい、さらには家財も結構持っている、というシニアには少し窮屈でもある。かといって、フルサービスの終身型リゾート施設はなかなか手が届かない。そういう層の住宅ニーズに着目したのが、積和グランドマストだ。

 積水ハウスは、全国で建設された16万戸を超える「サービス付き高齢者向け住宅」のうち、全国で5%、東京都では20%にものぼる豊富なシェアと実績を持っている。またこれまでも、工業化住宅技術を生かして2階建てから3、4階建てまで対応できる「セレブリオ」というサ高住専用商品を持ち、医療介護施設の設計ノウハウやユニバーサルデザイン、上質な住まいとしての設計提案で数多くの高齢者住宅を建設してきた。さらに「グランドマスト」というブランドを立ち上げた。これまでは、地域大手の社会福祉法人や大手介護事業者の注文を受けてサ高住を建築してきたが、新会社・積和グランドマストでは、全国の土地所有者に向けて、土地の新しい有効活用事業メニューの一つとして、サ高住を提案していこうという考えだ。

 地域のニーズの高まりを受けて、サ高住などの福祉住宅事業を手掛けたいと思っている土地オーナーは多いだろう。しかし、実際のところ、地域の工務店やメーカーでは専門的なノウハウを持っているところは少ない。その点、豊富な実績を持つ積水ハウスグループならば安心というわけだ。さらに専門子会社化されたことで、同社に土地と住宅の管理運営、入居者募集や福祉サービスやマネジメントまでを一括委託できることは、土地オーナーにとっても大きな魅力となるだろう。

 積和グランドマスト社は首都圏を皮切りに「グランドマスト」シリーズを年50棟ペースで開設し、5年後には5000戸の規模に拡大したい考えだ。この取り組みによる加速で、建設を請け負う積水ハウス側は、2013年度受注額で600億円規模であった医療介護分野の請負事業を早期に1000億円規模に成長させたいとしている。これまで福祉住宅の分野は介護福祉の専門事業者がビジネスを広げてきたが、住宅のプロが運営ソフトまでをパッケージで本格参入したことで、日本の福祉住宅のスタイルと市場が大きく変わる可能性が見える。

 積和グランドマスト社の理念は「誇り高き高齢期を過ごすことができる賃貸住宅を供給する」。シニアライフは第二の人生といわれるが「どこに、どのように、誰と住むか」は、その第二の人生を幸せに過ごせるかどうかを左右する最も重要なテーマだ。それは現在のシニア層だけでなく、40代、50代のシニア予備軍にとっても同じことだ。誇り高き高齢期を過ごすために、日本は今、高齢者向け住宅のことを真剣に考え直す時期にきているのかもしれない。(編集担当:藤原伊織)