【今週の展望】凍てついたマーケットに「春一番」は吹くか?

2016年02月14日 20:42

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「雪どけ」は、突然やってくる。春が一気にやって来たようなその日を境に、売り材料ばかり探していた市場心理も、買い材料を進んで拾い上げるようになる。

 日足一目均衡表の「雲」は前週の9日と10日の間でねじれた。その両日はSQ週の「鬼門」の火曜、水曜と重なったこともあり918円安、372円安で、悪いほうへの「変化日」だったかもしれない。12日時点の雲の位置は18665~18889円で、それでも12日終値から雲の下限まで3713円もの開きがあり、別の恒星系というより、もはや別の星雲(島宇宙)。今週の雲は上限も下限も一緒に下がっていく「天孫降臨」が起き、上限は15日の18761円から19日の18478円まで下がり、下限は15日の18371円から19日の18177円まで下がっていく。その後、21日に下限が18000円を下回り、月末の29日には17375~18014円まで降りてくる。

 オシレーター系指標は「売られすぎ」シグナルが4個点灯した。25日騰落レシオは57.72で売られすぎ基準の70を下回り、25日移動平均乖離率は-13.5%で売られすぎ基準の-4%をトリプルスコアで下回った。RCI(順位相関指数)は-76.9で売られすぎ基準の-50を下回り、ストキャスティクス(9日・Fast/%D)も5.8で売られすぎ基準の30を下回っている。30.9のRSI(相対力指数)も、4勝8敗で33.3%のサイコロジカルラインも、34.4のボリュームレシオも、売られすぎ基準線に近い低位にある。総じて言えばこれ以上の下値余地は乏しく、反発が期待できるポジションにある。

 2月5日時点の需給データは、信用倍率(貸借倍率)は5.24で、1月29日時点の5.22からほぼ横ばい。裁定買い残は242億円増加して2兆1874億円で、これも大きな変化はなかった。大きな変化があったのは投資部門別株式売買動向で、1月25~29日の週は外国人と個人の売越額合計が信託銀行の買越額とほぼ均衡していたが、2月1~5日の週は個人が1941億円の買い越しに転じたものの、11週連続買い越しの信託銀行の252億円と合わせても5週連続売り越しの外国人の売越額6112億円のおよそ3分の1程度しかなく、「需給三国志」のバランスが売りの方向に大きく崩れてしまった。それが週間騰落の559円高から698円安への転換に現れたが、前週は需給のアンバランスがさらに拡大して-11.1%の1866円安になったと思われる。

 前週のカラ売り比率は、8~10日は40.5%、12日は40.6%で、40%オーバーの高水準が続いていた。12日の「恐怖指数」を確認すると、日経ボラティリティ・インデックス(VI)は一時50を超えて終値は49.84。10日終値の44.15から5.69ポイントも上昇して今年の最高値を更新。昨年末の大納会は20を割っていたから、「恐怖度」はそのほぼ2.5倍になる。「チャイナ・パニック」時の終値の最高値、昨年8月25日の47.01も追い抜いてしまい、このデータだけでも前週のリスクオフがいかにすさまじかったかがわかる。

 マーケットは、売られすぎて凍てついてしまった。雪と氷の大地を溶かす春風はどこから吹いてくるだろうか? 春節明けで再開する上海市場、ではなさそうだ。中国は経済指標の発表が多く、とても期待できない。アメリカの経済指標も期待薄。イエレンFRB議長は前週の議会証言で昨年末からの経済の減速ぶりを認めている。ヨーロッパはEU首脳会議があるが、前週に飛び出した主要銀行の信用不安の火消しに追われそうだ。

 となると国内で、15日発表のGDPがマイナス成長になるのを引き金に、安倍内閣から景気刺激策の話が出てくるシナリオが最も期待できるだろう。16日実施の日銀のマイナス金利導入とリンクして、国が貸出リスクをシェアして金融機関に企業への資金融資を促すような政策がほしいところ。自己資本規制のリスク資産にカウントされなければ、金融機関は貸付を増やせるはずだ。

 そんな政策が出てくることを期待して、下げすぎた自律反発分と合わせて今週の上値の想定は16000円。まるで「春一番」のような激しさだが、そこまで上がらなければ「雪どけ」にはならず、マーケットの春はやってこない。一方、下値はかなり限定されて14900円と想定する。12日のNYダウは6営業日ぶりに反発しCME先物清算値は15410円まで上昇している。今週、怖いのは再開する上海市場と円高進行の再燃だろうか。

 ということで、今週の日経平均終値の予想変動レンジは14900~16000円とみる。北国の春のように、市況は一気に回復するか?(編集担当:寺尾淳)