セシウムは風化黒雲母に強く吸着することが判明。福島復興への寄与に期待

2016年02月16日 08:33

 福島第一原発事故がもたらした放射能汚染の解決に向け、一歩前進する研究成果が発表された。東京大学と日本原子力研究開発機構の研究グループは、放射性セシウムは福島の風化黒雲母に選択的に吸着され、そこに強く固定されることを明らかにした。土壌の放射性セシウムの今後の固定や拡散状況の把握、土壌からの除去方法、そして除染作業で発生した廃棄物の減容化方法の開発などで実用化されることが期待される。

 土壌の放射能汚染への対策は復興作業の中でも大きな課題となっており、汚染の実態を詳細に調べる研究や除染のための技術開発が各方面で進められている。

 今回の実験は、土壌中に存在すると考えられる様々な鉱物を基板上に細かく配置し、そこに福島の事故で実際に発生したと考えられる非常に低濃度の放射性セシウムを含む溶液を滴下し、吸着量などを調べた。その結果、放射性セシウムは風化黒雲母に集中して吸着することがわかった。黒雲母は福島を始めとする日本では一般的な岩石である花崗岩(御影石)の中に存在する、黒いごまのような物質。

 さらに、風化黒雲母等に取り込まれた低濃度の放射性セシウムがさまざまな試薬によってどのように溶出するかを調べたところ、他の鉱物では容易に放射性セシウムを溶出させる酢酸アンモニウムなどの試薬でも、風化黒雲母に吸着した放射性セシウムには効かず、鉱物そのものを溶解させるようなかなり強い酸でのみ溶出が確認された。

 研究グループは「風化黒雲母の有無が土壌における放射能の固定や流出など特性を大きく支配する可能性が高い。化学的な処理等による土壌中の放射性セシウムの除去方法の開発、除染作業によって膨大に発生しつつある汚染物質の有効な減容化や貯蔵方法の提案など、今後の放射能対策のための研究・開発の基礎となる画期的なものと言うことができる」と話している。(編集担当:城西泰)