田中俊一原子力規制委員会委員長は29日の参院安保特別委員会で、原発が弾道ミサイル攻撃を受けた時の放射性物質の放出を想定しているか、その影響について質され「航空機の衝突を含め、原発が大規模に損壊した場合の対処策は原発施設設置者に求めているが、弾道ミサイルが直撃したときの対策は求めていない」と答え、核施設であるにも関わらず、危機管理に大問題のあることが浮き彫りになった。生活の党の山本太郎共同代表が質した。
田中委員長は「弾道ミサイルが直撃するような事態は原発施設の設置者に対する規制により対処するようなものではないと考えている」とした。
田中委員長はそのうえで「九州電力川内1号、2号炉の適合性審査で原子炉破損の防止や敷地外への防止策、厳しい事故の想定のもとでの有効性を確認している」とし「セシウム137の放出量は川内1、2号機の場合には東京電力福島第一原発事故で放出された量の約1000分の1以下とみている」とした。
山本共同代表は「弾道ミサイルなどいろんなミサイルが着弾し、原発が破壊されて、1000分の1以下になるなんて、誰も思えない」と反論。「国防上、ターゲットになり得る核施設への想定で、想定は出来かねるでは困る」と政府の対応を求めた。
安倍総理は「原発への武力攻撃が起きた場合、原発から5キロメートル圏内は直ちに避難。原発から30キロメートル圏内はまずは屋内退避することが基本。他方、武力攻撃によって5キロ、30キロという範囲を超える大規模なエリアに放射性物質の放出が起きた場合には、臨機応変に対処する。状況により、30キロ以上のところにおいても避難することになっている。国は汚染レベルや武力攻撃の状況に応じて避難地域、避難先を明らかにして避難に関する措置を地方自治体に指示、また自衛官、海上保安官による誘導避難を通じて、自治体とともに全力で住民の救援にあたる」と答えた。原発を再稼働させるなら、少なくともミサイル攻撃に対処できる安全管理能力を施設に求めることが第一ではないのか。大きな不安を残した。
山本共同代表は「原子力災害本部長の総理が、弾道ミサイルの直撃を受けた場合を想定したシミュレーションをすべき」と求めた。また、弾道ミサイルの対応ができていない中で、川内原発の再稼働はすべきでないと訴えたが、安倍総理は「原子力規制委員会の基準に適合した原発は再稼働を進める」と答えた。(編集担当:森高龍二)