旅館・ホテルの業績が好調なことが、東京商工リサーチの調べで分かった。調査対象期間は2014年9月から15年8月で、48.2%が増収、41.0%が増益となり、大都市圏や人気の高い観光地の沖縄県、山梨県などで目立った。同リサーチでは「景気回復による国内旅行者や訪日外客数の増加」を理由として挙げている。一方で、インバウンド効果が得られにくい岩手県、茨城県、新幹線開通前の富山県などは減収企業の割合が高かった。
調査は売上高が3期連続で判明した1,569社を対象とした。増収企業の割合48.2%は前期の54.9%からは減っているものの、同リサーチでは「客室稼働の好転が売上高を押し上げている」と好調を維持しているとみている。特に、大都市圏や人気観光地で増収率が高く、トップは近畿で増収企業が64.6%を占めた。関東(59.5%)、北海道(51.1%)が続いた。京都、奈良などの観光地が多い近畿や大都市圏、さらに訪日観光客にも人気のある北海道で増収が目立った。
減収企業率は、岩手県が80.0%で最も高く、茨城県、富山県、高知県の順だった。大都市圏から離れ、観光資源やインバウンド効果が乏しい地域で多かった。赤字企業が最も多かったのは北陸で、赤字企業率は37.8%だった。北陸新幹線開通前の実態がうかがわれる。次いで、東日本大震災の被害が大きかった東北(30.2%)、中国(27.9%)の順だった。
ホテル・旅館を売上高別でみると、1~5億円未満が533社(構成比34.0%)と最も多く、次が1億円未満で462社(同29.4%)。旅館・ホテル運営企業は中小・零細企業が半数を占めていることが浮き彫りになった。
同リサーチでは「政府は2016年度予算に観光庁関連として前年度比約2.4倍の約245億円を計上し旅館・ホテル業を後押しする姿勢を示している。観光資源をどう地方活性化につなげられるか、国や自治体、企業の取り組みが注目される」と話している。「地方創生」を担当大臣までつけて取り組み始めた安倍政権だが、今や「一億総活躍社会」のスローガンに隠れてしまった感がある。お上頼みだけではなく、自分たちの力で「創生」していく気概も求められるようだ。(編集担当:城西泰)