生誕30年エアーポットが生き残る理由(わけ)

2016年02月14日 13:57

あたまを押してお湯を出すエアーポット。電気ポットに押されて売り場の隅っこに……と思っていたが、実は進化を続けながらしっかりと生きていた。ステンレスエアーポットが初めて登場してから今年で30年だという。

象印マホービンでは、3月から強度と保温保冷性能を高めた魔法瓶のステンレスエアーポットSR-CC型2サイズ(2.2L/3.0L)を発売する。「氷を入れても、落としても割れにくく、ステンレス真空2重構造で高い保温・保冷力を発揮する」という。新柄を採用し、手で触れる機会の多いハンドル部分に銀イオン抗菌加工を施すことで清潔感をアップさせた。

 魔法瓶は、内容物の熱の伝導や対流、放射を遮るために容器の外側と内側の間に真空部分をつくることで保温するという構造。魔法瓶自体は20世紀初頭からあったが、内壁がガラスだったため、強度の点で問題があった。遠足で水筒型の魔法瓶を落として割ってしまい泣いている子を覚えている世代も多いのでは。その点を克服したのが、ガラスの代わりにステンレスを使った魔法瓶だ。割れない、錆びない、丸洗いができるという特徴と、真空部分を薄くできるという工法上の進化もあり、家庭だけではなく、レジャーや職場などの利用シーンに応じた製品が開発されてきた。

 その一方で、魔法瓶の謎も残る。卓上タイプのエアーポットは保温機能のある電気ポットに駆逐された感があったが、いまだに需要は多いという。象印では「電気ポットとエアーポットでは通電するかしないかという大きな特徴の違いがある。通電する電気ポットは電気によって一定温度をキープでき、通電しないエアーポットは電源のない場所に持ち出しても一定時間温度をキープすることができる。それぞれ製品特性に違いがあるため、住み分けしている」と説明している。もちろん象印でも電気ポットを扱っている。業界出荷実績でステンレスエアーポットと電動エア―ポットの数量数を比べると、約1:9だという。

 さらに謎なのは、ガラス製のエアーポットがまだ販売されていることだ。ガラス製のデメリットを克服するためのステンレス製だったのになぜか? 象印では「ステンレス製と比べてガラス製は割安。旅館や食堂などから現在でも需要がある」と回答。かつてどこかで見た、ひなびた旅館の座卓に置かれたペリカン口のポットを思い出した。先端技術に駆逐されることなく、適材適所で生き残る製品は多いということだろう。(編集担当:城西泰)