民泊はうまくいく? 官民の取り組み

2016年02月16日 10:51

 「民泊」というと、少し前のテレビ番組にあった、有名人が田舎を訪れて民家に一晩泊めてもらうというシチュエーションを思い浮かべる人も多いかもしれない。それも民泊に違いないが、今注目されているのは訪日外国人を相手にビジネスとして空き家や空き室を貸そうという動きだ。

 2015年の訪日外国人客数は、前年比47.1%増の1,973万7000人を記録した。特に中国からの訪日は前年比107.3%増の499万人に達した。一方で、ここ数年指摘されている問題に、首都圏や大都市圏を中心にしたホテル不足がある。すべてが外国人客のせいではないにせよ、急な出張の際に数年前なら簡単に予約できたビジネスホテルでも満室、あるいは2倍、3倍の料金に跳ね上がっていることもしばしばだ。そして、あふれているのは、訪日外国人も一緒。宿泊先を探さなければならない。

 そのような宿泊施設不足をカバーしようと生まれたのが民泊ビジネスだ。自宅やマンションの一室を外国人に提供し、宿泊料を取るというもの。本来なら旅館業法に基づいて都道府県知事らの許可を得る必要があるが、多くの業者が違法状態にあるとみられ、宿泊者のゴミや騒音などをめぐりマンションの住民との間にトラブルが生じているところもある。

 行政としてこのグレーゾーンにメスを入れたのが、東京都大田区。国家戦略特区としての規制緩和を利用し、独自の基準で民泊条例を制定した。滞在期間は6泊7日以上で部屋には火災警報器や、避難経路や施設の使い方、ゴミの捨て方を外国語併記した説明書を備えること、事業者は宿泊者からの電話による相談を24時間受け付けることなどを求め、近隣住民に対しては事業計画を事前に書面で知らせること、としている。

 「民泊業者第1号」が12日に認定された。申請していたのはインターネット宿泊仲介サービス「とまれる」で、JR蒲田駅から徒歩14分の平屋家屋(定員4人、約55平方メートル)と、同3分のマンションの1室(2人、約25平方メートル)が最初の対象となった。平屋家屋のほうは、築65年の日本建築で日本の文化を感じさせる調度も配している。

 一方、不動産開発などを手掛けるディア・ライフは12日、訪日外国人の宿泊需要に対応可能なマンションの開発を、同社が得意とする東京主要エリアにおいて展開していく方針を定めたことを発表した。訪日旅行手配に強みを持つ企業など3社と業務提携を結び、今後の展開を図る。

 行政も民間も当面の目標は2020年東京五輪にあるはずだ。新しい基準作りも、新規事業開拓もまったなし。宿泊需要がパンクしないよう良い方向に向かって欲しい。(編集担当:城西泰)