現在、電子機器の主役はPCからスマートフォンへと移行した。これに対し、半導体の実装もその形状に対応してさらに薄型化・高密度化が進んでいる。これを受け、富士キメラ総研は、半導体実装関連の世界市場を調査、その結果を報告書「2016 エレクトロニクス実装ニューマテリアル便覧」にまとめた。
それによると、半導体市場は、設計は欧米メーカー、前工程は台湾メーカーの独壇場となっている。後工程は台湾や韓国メーカーのシェアが高いが、近年は半導体設計および製造工程で中国メーカーのシェアが伸びているという。その一方で、高速性や高密度、低反りなどが求められるプリント配線板や関連材料、高精度、高品質が求められる実装装置などの分野では、依然として日本メーカーのシェアが高く、今後も技術力を活かした優位な展開が期待されるとしている。
プリント配線板の2015年の市場は5兆8,547億円となり、2020年は2015年比8.8%増の6兆3,707億円と予測した。タイプリント配線板関連材料は2015年は2兆2,643億円となり、2020年は同1.0%増の2兆2,872億円と予測した。実装関連装置は2015年は4,203億円となり、2020年は同5.4%減の3,976億円と予測した。
プリント配線板はTVやPCの市場が低迷しているため、それらで採用されることが多い多層リジッドプリント配線板やFC-BGA基板などが苦戦しているという。一方、高密度実装のニーズを満たしスマートフォンで使用されるビルドアッププリント配線板(Any Layerタイプ)や、「iPhone6s」(Apple)で採用されている「Force Touch(感圧タッチ)」向けのフレキシブルプリント配線板(FPC)は伸びている。FPCは2015年時点で日本メーカーが市場の約4割を占めている。
また、高多層リジッドプリント配線板はハイエンドサーバーやハイエンドルーター、基地局向けで伸びており、2016年以降はやや低迷するものの、第5世代移動通信システム(5G)の基地局設置に対する投資が本格化する2020年には需要が大幅に増加するとみられるとしている。
プリント配線板関連材料はプリント配線板に連動してフレキシブル銅張積層板(2層)やガラス基材銅張積層板(高速基板)などが伸びている。今後もそれらが市場をけん引するとみられる。他にも電解銅箔からの切り替えが進む圧延銅箔や、表面処理に使用される金めっきなどが伸びるとみられる。実装関連装置は単価の下落もあり、今後市場は縮小するとみられるとしている。(編集担当:慶尾六郎)