日本再生に向けた、医療分野への研究開発助成とは

2012年05月28日 11:00

 現在、高血圧や高脂血症等は薬剤で医療ニーズが比較的満たされている一方、癌やアルツハイマーなどは薬剤の貢献度が低く、ニーズが高まっているという。この医療ニーズと医薬品の開発成功率の低下とがあいまって、医療メーカーの研究開発費が増加傾向にある。この傾向は薬剤の分野に限らず、予防医学の研究等、広く医療の分野で見られ、これに呼応するように研究開発に対する助成制度も広がりを見せている。

 2008年に設立された「山田養蜂場 みつばち研究助成基金」による助成制度は、幅広い視野をもつ研究者による創造的で有用な研究テーマを支援し、科学的な解明を進めることで、予防医学的研究ならびにミツバチ研究をさらに発展させることを目的とした制度。今年も5月1日から6月末まで応募の受け付けがされている本制度は、昨年にも「ミツバチ関連成分の免疫制御機能を応用した新たな抗肥満・抗メタボリックシンドローム療法の開発」や「プロポリスによる糖尿病患者インスリン抵抗性改善の機構解明と臨床応用」などといった研究テーマが採択され、その成果報告に期待が集まっているところである。

 また塩野義製薬では、自社での研究開発とは別に研究助成活動を実施。塩野義製薬二代目社長塩野義三郎氏の遺言により、同氏の個人財産を基本財産として薬学を研究する個人または法人に対して経済的援助をするため篷庵社を設立。薬学に関する研究及び調査に対する助成、薬学に関する研究文献その他の資料の整備などを実施し、薬学の発展を支えている。その他、研究開発志向型製薬会社で組織されている日本製薬工業協会の会員会社が中心となって未承認薬等開発支援センターが設立されるなど、腰の重い行政に変わり、民間が主体となって研究・開発のための助成が進められている。

 5月10日に内閣官房により発表された医療イノベーション5カ年計画中間報告。ここでは、日本を国内外の研究者が集まる魅力的な場にすべく、国内の研究開発環境を改善すること及び、日本医療をパッケージインフラのソフト版として海外に展開することが戦略として掲げられている。とりわけ、弱点を重点的に補強する施策の一つとして、基礎研究に関する分野で研究資金の集中投入が挙げられており、重かった腰を上げる格好を見せている。医療イノベーション5カ年戦略として日本再生戦略に盛り込まれる予定であるというが、どれだけ有効なものにできるのであろうか。世界最高水準の医療の実用化・普及に向けた期待が高まる。