半導体メーカーのロームが、電気自動車(EV)やハイブリッドカー(HV)用のインバータに搭載されているIGBTやパワーMOSFETの駆動に最適な絶縁素子内蔵ゲートドライバ「BM6103FV-C」を開発したと発表した。
半導体メーカーのロームが、電気自動車(EV)やハイブリッドカー(HV)用のインバータに搭載されているIGBTやパワーMOSFETの駆動に最適な絶縁素子内蔵ゲートドライバ「BM6103FV-C」を開発したと発表。絶縁素子を内蔵したゲートドライバとしては業界最小の小型パッケージでありながら、業界で唯一のSiC対応の絶縁素子内蔵ゲートドライバになっているという。
近年、EVやHVの普及が進む中、さらなる性能向上のため、動力部であるインバータ回路の小型化への要求が高まっている。そうした中、車載特有の厳しい駆動環境の中で安全性を確保したインバータ回路を実現するためには、様々な保護機能が必要となるほか、運転者を感電から守るため、絶縁素子としてフォトカプラ等の外付け部品も必要となる。その為、絶縁素子を内蔵し、かつインバータの小型化を実現する、小型のゲートドライバへのニーズが高まっている。一方で、次世代EV/HVへの搭載が期待されているSiCデバイスをインバータ回路に使用した場合、その高速スイッチング性能によって発生するノイズへの対策も大きな課題だ。
今回ロームが発表したゲートドライバ「BM6103FV-C」は、こうしたニーズに応え、課題の解決に貢献するもの。ローム独自の微細加工技術を応用し、オンチップトランスフォーマプロセスを開発することにより、小型でありながら絶縁素子を内蔵したゲートドライバの開発に成功。外付け部品を不要にするとともに、小型パッケージの採用により、従来品に比べて実装面積を約50%も削減しているという。さらに車載インバータ回路に必要とされる保護機能をすべて搭載しているため、インバータの小型化だけでなく、設計負荷の軽減にも大きく貢献。また、インバータ回路にSiCデバイス、モジュールを搭載した場合のノイズ対策については、業界最先端を誇る自社製SiCデバイス、モジュールと組み合わせて開発を進めることにより、最適な回路設計を見出し克服した。
昨年以降、自動車メーカー各社が積極的に展開している電気自動車。しかし、メーカーの意気込みとは裏腹に、自動車販売協会連合会の新車乗用車販売台数ランキングには一台も30位までにランクインせず、市場への普及はあまり進んでいない状況にある。その原因として、充電設備などのインフラが未整備であることだけでなく、走行距離の短さが挙げられる。こうした中、今回開発されたゲートドライバは、次世代パワー半導体として期待されるSiCを使用したパワーMOSFETの高速スイッチングにも対応しており、より高効率で低消費な次世代電気自動車の実現、つまり走行距離の伸長にも貢献するものとなる。6月からのサンプル出荷、9月からの量産開始というから、来年以降、走行距離が伸長した電気自動車が市場に登場し、本格的な普及が始まると言えるのかもしれない。