東北大が高品質単結晶シリコンの低コスト製造技術を開発 発電コスト14円/kWhの達成に寄与

2016年03月27日 14:19

 再生可能エネルギーの普及拡大には、その発電コストが化石燃料によるコストを下回る必要がある。そのためには、太陽電池の変換効率を限界まで向上させなければならない。現在、結晶シリコン太陽電池の低価格化とともに変換効率向上のための競争が世界的に激化しており、太陽電池の基板となる結晶シリコンの品質向上が強く求められている。

 単結晶シリコンの高品質化には、MCZ法という石英るつぼの外部から磁場を作用させながら結晶を製造する手法が主に用いられているが、太陽電池に強く求められるコストダウンが課題だった。今回、東北大学金属材料研究所 結晶物理学研究部門 藤原航三教授、および結晶材料化学研究部門 宇田聡教授は、FTB 研究所、国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)、福島再生可能エネルギー研究所再生可能エネルギー研究センター 太陽光チームの福田哲生招へい研究員、高遠秀尚チーム長と共同で、高品質単結晶シリコンの低コスト製造技術を開発した

 単結晶シリコンの製造は、石英ガラス製の円形るつぼで原料シリコンを融かしてシリコン融液とし、予め準備した細い棒状の単結晶をその表面に浸漬し連続的に上方へ引き上げることによって行われる。この結晶製造方法をCZ法と呼ぶ。シリコン融液は非常に活性であるため、接触した石英るつぼ壁を溶かし出します。また融液は熱対流を起こしており、これが石英るつぼの溶解を加速する。

 同グループは、CZ法で溌液性が最も効果的に発現される結晶製造方法(LCZ法)を確立、これを用いて実用サイズの直径200mmの単結晶シリコンを製造することに成功した。この技術は磁場を用いず、通常のCZ法でるつぼの溶解を抑止するので、より安価で高品質の単結晶シリコンを製造できる利点があるという。

 LCZ 法を用いることで、新規の投資をほとんどせずに石英るつぼと結晶成長条件を変更するだけで高品質の単結晶シリコンが得られる。その結果、現在の標準型太陽電池の変換効率が向上するため、太陽電池メーカーにとっては大きな魅力となるとしている。今後は需要に応じて溌液るつぼの製造設備の拡充を行い、るつぼの低コスト化を図る予定。同時に金研、FTB 研、産総研は、今後も溌液るつぼや結晶成長技術の改良を行うとともに、より高品質な結晶シリコンの量産化に対応した製造技術の開発に取り組み、2020年発電コスト目標14円/kWhの達成に寄与していく方針だ。(編集担当:慶尾六郎)