2050年には8兆円市場に 建物付帯型水素エネルギー利用システムの開発スタート

2016年03月04日 09:23

 経済産業省と独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によると、水素・燃料電池関連の市場規模は、国内だけでも2030年に1兆円程度、2050年に8兆円程度に拡大すると試算されている。水素エネルギーの利活用技術の適用可能性は幅広く、燃料電池自動車や既に実用化段階にある家庭用燃料電池システムだけでなく、船舶や鉄道などを含む他の輸送分野、水素発電など、我が国のエネルギー消費分野の多くに対応し得る潜在的なポテンシャルがあるとされている。

 今回、清水建設<1803>は、国立研究開発法人産業技術総合研究所との共同研究として、施設内で使用する太陽光などの再生可能エネルギーの余剰電力を水素に代替して貯蔵し、必要に応じて放出・発電する水素エネルギー利用システムの研究開発に着手した。

 共同研究では、水素を利用して再生可能エネルギーを効率よく貯蔵・利用でき、かつ水素社会に対応できる建物付帯型のコンパクトで安全な水素エネルギー利用システムの開発に取り組む。共同研究期間は2年間の予定で、今後、産業技術総合研究所の福島再生可能エネルギー研究所(FREA)を拠点に研究活動を推進する。

 水素エネルギー利用システムとは、余剰電力で水を電気分解して水素を製造、水素吸蔵合金により水素を貯蔵、必要の都度、水素を放出させて酸素との化学反応により電気と熱を取り出すもの。水素貯蔵については、産業技術総合研究所が知見を蓄積してきた水素吸蔵合金をベースに合金材料や配合比の最適化を図り、最大で体積の1,000倍の水素を吸蔵するという合金の特性を最大限活かし、コンパクトかつ安全な貯蔵手段を確立。そのうえで、清水建設が開発したスマートBEMSにより、再生可能エネルギーの発電状況と建物の電力・熱需要を勘案して、水素の製造、貯蔵、放出等を制御する技術を確立する。

 計画では、約2億5,000万円を投じて、2016年秋までに産業技術総合研究所の福島再生可能エネルギー研究所内に実証システムを構築し、2018年3月まで実証運転を行う。その後、実証運転で得た各種データをフィードバックしてスマートBEMS制御の水素エネルギー利用システムを完成させ、2020年までに建物、街区への導入を目指す。(編集担当:慶尾六郎)