「集団的自衛権の行使容認は憲法9条に反する」と民主、維新、社民、生活の4党と共に、安保法制に対し廃止法案を共同提出し、立憲主義・民主主義を回復させるため、参院選挙1人区で自らの党の候補を下ろし「自公候補と野党候補の一騎打ち」を実現して選挙を戦うという日本共産党は安倍晋三総理にとって最大の対峙政党になっている。
日本共産党に安倍総理の危機感は相当強いよう。党内集会で「今夏の参院選挙は自公対民共の戦い」と繰り返し発言していることからも分かる。
そんななか、安倍内閣は「日本共産党は破壊活動防止法に基づく調査対象団体で、暴力革命の方針に変更はないと認識している」と驚きの認識を今月22日に示した。
日本共産党は公の国政政党で、安保法制では「護憲」に回っている。憲法学者をはじめ日本弁護士連合会、最高裁元判事、内閣法制局元長官ら専門家らがそろって違憲の疑いが強いとする集団的自衛権の行使を含む安保法案を強行成立させた安倍内閣と自公の与党に数の力による憲法破壊との世論があがっており、憲法を守っていない政党はどちらか、参院選挙の争点として国民の審判を仰ぐことが望ましい。
そもそも戦後70年を経て、現在の日本共産党が暴力革命を目指していると思う国民がどのくらいいるのだろう。筆者は自由主義経済の下で社会的歪を修正することが必要とする立場で、過去の修正資本主義者だが、共産主義や社会主義を目指す立場でない筆者からみても、公安調査庁が未だに日本共産党を調査対象にしていることに日本国憲法の視点から見て強い違和感を持つ。今回の安倍内閣の日本共産党に対する認識が選挙対策のレッテル貼りといわれても仕方ない状況かもしれない。恣意的要素が含まれるとすれば重大な問題だろう。
安倍内閣は、今回の認識を示した根拠に破壊活動防止法に基づく調査対象団体だとあげた。しかし、調査対象団体にあること自体が問題であるとはしなかった。それこそが問題であったはずで、いわば未だに調査対象のままになっていることを逆手にとった格好だ。
公安調査庁は「破壊活動防止法に基づいて、暴力主義的破壊活動を行う危険性のある団体の調査を行い、規制の必要があると認められる場合には団体の規制に関し適正な審査及び決定を行う機関である公安審査委員会に対し、その団体の活動制限や解散指定の請求を行います」と団体規制についての役割を紹介している。
その公安調査庁は今年1月公表した「内外情勢の回顧と展望」で国内情勢の欄に、オウム真理教、過激派、右翼団体と並べて、日本共産党を取り上げている。そもそも調査対象にされ、こうしたレベルで掲載されることに日本共産党は抗議し、調査対象にあることを公の国政政党として違憲であると法廷で争うべきではないか。また調査対象とされる合理的根拠を公表するよう求めるべきだろう。その点では日本共産党にもこの問題を解消する積極的取り組みをしてこなかった責任の一端はあるといえよう。
今回、民主党を除籍処分になった鈴木貴子衆院議員(無所属)が日本共産党と破壊活動防止法に関する質問主意書を提出したのに対しての安倍内閣の回答から、政府見解が明確になったことで、日本共産党の山下芳生書記局長は「党として厳重抗議し、撤回を求める」としているが、あわせて、公安調査庁に党としての抗議もすべきではないのか。公の政党が公安調査庁の調査対象になること自体、憲法上の結社の自由の侵害にならないのか気になる。
山下書記局長は「破防法の対象になるようなことは過去にも、現在も、もちろん将来にも、一切ないということは改めて述べておきたい」と党の機関紙で明確に示した。
今回の日本共産党に対する政府の認識もさることながら、筆者はむしろ、憲法に緊急事態条項を創設し、総理の緊急事態宣言によって内閣がつくる政令に法律と同じ効果を持たせるという、いわば国会のチェック機能を蔑ろにしかねない改憲を目指す自民党の憲法草案の方がよほど国民にとって危険だと感じている。危惧は筆者だけだろうか。(編集担当:森高龍二)