性と自己の意識が一致しない性同一障害(GID)の診断や治療の充実を図るべく、GID学会は認定制度を導入し、今年3月20日に初の認定医9人を発表。同学会の中塚理事長は「認定医制度を通じて、GIDの治療は必要な医療だということを社会にも理解してほしい」と語った。
同認定医になるには、高度な知識や技量、経験が必要である。精神科や泌尿器科、産婦人科、形成外科などの専門的知識と技術、さらに性への違和感に悩む子どもたちに対する学校の対応といった社会的な課題に関する知識も必要だ。また、20人以上を診断した経験も求められ、関連の論文や著書があることも条件とした。
GIDの治療には、精神療法やホルモン療法、身体的療法がある。戸籍の性別を変更するためには性同一性障害特例法に基づき性別適合手術が必要で、2004年に同法が施行されてから14年までの間に5000人以上が性別を変更した。
国内で性別適合手術を行っている施設は限られており、日本では保険が適用されないため、高額な費用を負担しなくてはならない。こうした背景があり、費用が安いタイなどの海外で手術を受ける人が多いのだが、海外だと術後のケアが十分でない可能性もあり、中塚理事長は「日本で安全な医療を提供できるのが望ましい」と述べている。
性別適合手術は、身体的性別による苦痛を緩和するために外観を調整するものであるが、手術をしたら性の悩みから解放されるのかというと、必ずしもそうだとは言えない。手術に失敗し、再手術を余儀なくされる人や、耐えがたい苦痛のために死を選ぶ人もいるのだ。安全性の確保と、体と心の両方をサポートできる施設や環境が必要である。
同認定医は公的な資格ではないが、認定医が増えることで治療の質が向上し、治療施設の拡大が期待できる。そうなれば保険診療の実現もあるかもしれない。同学会は認定する仕組みを整備し、5年間で50人の認定医育成を目指すとしている。(編集担当:久保田雄城)