「コンプライアンス(企業倫理・法令順守)問題に対する認知や理解は企業内で進んでいるが、肝心な従業員の意識や行動はそこまでついて行っていない」。日経リサーチが実施した「コンプライアンス意識調査」で、この結果が明らかになった。今回の調査は全国の企業や役所、団体などで働く約10万人を対象に、2016年3月に実施した。
まず、勤務先のコンプライアンス関連規定をどの程度理解しているか聞いた。正社員は「かなり理解している」と「ある程度理解している」の合計が83.7%となり、前回調査から理解度は6.1ポイント上昇した。一方、非正規社員の理解度は65.6%と正社員に比べるとかなり低水準にとどまったが、前回よりは4.8ポイントのアップで、コンプライアンス問題に関する理解は着実に進んでいることがわかった。
一方、勤務先にコンプライアンスに関する相談・通報制度が「ある」と答えたのは正社員の51.4%、非正規の40.1%で、前回に比べると、正社員で3.3ポイント、非正規で2.3ポイントの上昇となった。企業側も少しずつだが、相談体制の認知・理解を進めている様子がうかがえるとしている。
ただし、それらの制度が十分活用されているとは言い難いという。職場でコンプライアンスによる問題で悩んだ時、誰に相談するか、複数回答で尋ねたところ、正社員はトップが「上司」で46%、「同僚」が30.7%で2位になった。「誰にも相談をしない」がこれに続き、「社内のコンプライアンス関係部署」は16.0%で、「家族・友人・知人」も下回って5位にとどまった。
さらに、コンプライアンス問題の発生が懸念される状態にある企業が増えていることもわかった。業務手順がマニュアルに従って、適正な方法で行われているかという質問で、自分や自分の周囲があてはまる(「かなりあてはまる」と「ややあてはまる」の合計)という回答者は正社員で35.8%、非正規社員で37.9%、あてはまらない(「あまりあてはまらない」と「全くあてはまらない」の合計)は正社員26.0%、非正規21.4%だったが、前回の結果と比べると、あてはまるは正社員で10.3ポイント、非正規で11.4ポイントも低下したのに対し、あてはまらないは正社員で11.3ポイント、非正規で8.9ポイント上昇した。
その一因ではないかと思われるのが、組織風土の悪化だという。今回の調査で「あなたの職場では、コンプライアンスより、業績の向上を優先する傾向があると思いますか」というストレートな質問を投げかけたところ、そう思わない(「あまりそう思わない」と「全くそう思わない」の合計)が正社員29.6%、非正規社員26.9%だったのに対し、そう思う(「とてもそう思う」と「ややそう思う」の合計)は正社員38.0%、非正規29.8%となり、自分の職場はコンプライアンスより業績優先だと思う社員が思わない社員を上回った。
前回の結果をみると、正社員はそう思うが25.1%だったのに対し、そう思わないは45.7%もあり、非正規もそう思うが21.3%、そう思わないが43.0%となっていて、正規・非正規とも自分の職場はコンプライアンスを重視していると考える社員が大きく上回っていた。この2年間で多くの企業の組織風土に何らかの変化があったことがうかがえるとしている。 (編集担当:慶尾六郎)