日本国内の住宅ストックを有効活用するリフォーム・リノベーション事業が急速に存在感を増している。富士経済が2015年2月に発表した市場予測によると、2017年度の国内住宅リフォーム市場規模は8兆円を見込んでおり、住宅、リフォーム事業者だけでなく、東急電鉄<9005>がリフォームベンチャー企業「リノべる」と資本提携しマンションリノベーションに参入する他、ソニー<6758>やグリー<3632>など、異業種からの新規参入事業者も増えている。住宅ストックの増加や政府の成長戦略の中でストックの有効活用も新築同様に重視するという住宅政策などを背景に、今後益々、リフォーム事業への強化が活発に行われる見通しだ。
そんな中、リフォーム事業売上が2014年度1341億円で業界トップの積水ハウス<1928>グループは、一次取得者や、経年したマンションのスタイリッシュな刷新を希望するシニア層などを主要ターゲットにした、著名デザイナーとのコラボレーションによるマンションリノベーション「RENOVETTA(リノベッタ)」の取り扱いを4月8日から開始した。
「リノベッタ」のデザイン監修を担当しているのは、日本のみならずイタリアやドイツなどでも活躍する世界的なプロダクトデザイナーで、日本インテリアデザイナー協会理事長の喜多俊之氏。喜多氏は、日用品からロボットまで幅広い分野のデザインで活躍するヒットメーカーだ。喜多氏の作品の多くが、ニューヨーク近代美術館(MOMA)やパリ国立近代美術館、ミュンヘン近代美術館等、世界の名だたるミュージアムにコレクションされている。日本各地の伝統工芸や地場産業の活性化などにも尽力し、40年にわたって日本人の暮らしと生活環境をテーマにした研究を行っており、2012年にマンションリノベーション「リノベッタ」を立ち上げた。このような優秀なデザイナーとリフォーム売上トップの大企業が組んだというのが面白い。
分譲マンションは60~80㎡の2DK~3LDKの小さく仕切られた間取りが一般的だ。喜多氏によると、欧州やアジア諸国と比べ、特に日本の集合住宅の暮らしの質は遅れをとっているという。今回、喜多氏は、マンションの間仕切りを取り払ってスケルトン化して、機能的でスタイリッシュな習い事や教室も可能な空間にすることで、人が集まり、自然と会話が広がるコミュニケーションの場を実現。また、日本の伝統工芸を取り入れたオリジナルの組立式和室「障子結界庵」や可動式の「スライド間仕切り」など、ライフスタイルやライフステージに合わせて変化する空間を提案している。
修理・修繕のためだけのリフォームではなく、生活をより豊かに、楽しくするためのリノベーションが広まれば、日本の住宅全体の質の向上にもつながるだろう。
積水ハウスグループのマンションリフォームは従来自社分譲してきたマンションリフォーム提案が主だった。今回大きな需要が見込まれる1970年代から80年代に大量供給された一般のマンションのリノベーション市場に最大手のハウスメーカーとして参入する。「リノベッタ」を起爆剤に、リノベーション需要を取り込み、リフォーム事業売上2000億円を目指す。(編集担当:藤原伊織)