3.11の記憶も新しい、地震大国“ニッポン”の住宅。耐震や免震とは異なる“制震”、住友理工の提案

2016年03月12日 19:41

Sumitomo_TRC

写真左の模型が住友理工の「TRCダンパー」を筋交いの代わりに組み込んだ“制震住宅”。右が従来型の筋交い補強の耐震住宅

 まだ記憶に新しい2011年3月11日に発生した「東日本大震災」をみても、地震大国「日本」の私たちは、今後も「大震災」の脅威から逃れられそうもないのが現実だ。

 文部科学省・地震調査研究推進本部の2012年発表データによると、今後30年の大震災発生確率は、「東海地震88%/マグニチュード8程度」「南南海地震70%/マグニチュード8.1程度」「南海地震60%/マグニチュード8.4程度」とされているように、国内における大震災発生確率は決して低くない。

 こうした地震に備え、家屋や財産を守るための耐震設備や免震機能をもった住宅建設が進んでいる。ただし、構造耐力壁を増やしたりする耐震工法は、地震の加速度は低減されないので、建物にダメージが残る可能性は否定できない。また、免震構造に用いる免震装置は、加速度を大きく低減する代わりに非常に高価だ。また、軟弱地盤では設置不能。

 3月8日から東京ビッグサイトで開催された「NIKKEI MESSE」の「建築・建材展」で自動車用防振ゴム世界シェアNo.1の住友理工が、こうした免震&耐震の弱点をクリアする、耐震や免震とは異なるコンセプトの木造住宅向けの“制震”システムをアピールする展示で注目を集めた。商品名は「TRCダンパー」で、地震のエネルギーである“揺れ”を吸収するショックアブソーバーのような装置だ。

 TRCダンパー内部には、同社独自開発の“特殊粘弾性ゴム”が組み込まれている。この特殊粘弾性ゴムは、反発せずに「瞬時に運動エネルギーを吸収して熱エネルギーに変換する」特殊なゴムだ。ブースには、ふつうのゴムで出来たボールと同社製特殊粘弾性ゴムボールが用意され、同じ高さから床に落とすと、ふつうのゴムボールは弾んで跳ね返るが、特殊粘弾性ゴムボールはまったく跳ね返らない。この性質を利用して地震エネルギーを吸収するのが「TRCダンパー」なのだ。

 このダンパーは、写真の模型のように床面積30坪ほどの2階建て木造軸組構想の家屋筋交い部に4本から5本ほど設置して使うわけだが、震度6強の地震の揺れ・水平変位を最大50%吸収し、住宅の損傷を軽減するという。耐震構造では1回目の本震で損傷した部分が、2回目・3回目の余震で被害が拡大する恐れがあるが、「TRCダンパー」を使った制震構造は余震のような繰り返す地震にも有効に働くという。

 このTRCダンパーは、国土交通省の大臣認定「壁倍率1.3」を取得し、新築住宅の耐力壁として耐震等級が向上する。同時に住宅金融支援機構の省令準耐火構造工法として承認を得ている。また、リフォーム時でも有効で、日本建築防犯協会技術評価を取得しており、耐震補強の補助金対象工法となっている。(編集担当:吉田恒)