今年の夏は暑くなる? ラニーニャ現象とは

2016年05月01日 11:52

画・今年の夏は暑くなる? ラニーニャ現象とは

気象庁によると、過去15回のエルニーニョ現象のうち、それに続いてラニーニャ現象が発生したのは11回。また、オーストラリア気象局は今年ラニーニャ現象が発生する確率は現時点で50%との見通しも示している。

 2014年6月から昨冬にかけて続いたエルニーニョ現象。太平洋の赤道と日付変更線が交わるあたりから南米のペルー海岸にかけての海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象だ。エルニーニョ現象が発生すると世界中で異常な天候が起こるといわれており、日本では昨冬、気温が平均より高くなり各地のスキー場が雪不足に見舞われた。そのエルニーニョ現象が、6月ごろまでに終息する見込みだと気象庁が発表した。しかし今度は8月までにラニーニャ現象が発生する可能性があることも同時明らかにされた。ラニーニャ現象が発生すると日本付近では太平洋高気圧に覆われやすくなり、夏は暑く冬は寒くなることが多いとされている。今年の夏も、「酷暑」となるのか。

 ラニーニャ現象はエルニーニョ現象と逆で、ペルー海岸付近の海水温が低くなり、温かい海水が西へ押しやられるものだ。海の温度が変われば気圧配置や雨量にも変化が起こるため、洋上の気象も変化する。もちろんエルニーニョ同様、その影響は日本だけでなく全世界で起こり、特に農産物市場に大打撃をもたらす危険性がある。気象庁によると、エルニーニョ現象が終息した年にラニーニャ現象が始まれば全国的に記録的な猛暑となった2010年の夏以来。実はこの夏からの1年間で、アメリカ・シカゴ商品取引所の小麦相場は21%、大豆は39%前後上昇したのだ。ニューヨークの砂糖先物相場は67%上昇した。

 ラニーニャ現象の影響は農業にとどまらない。シカゴ・マーカンタイル取引所(CMEグループ)によると、1998年から2000年まで続いたラニーニャ現象ではアメリカとカナダで寒冷な冬となり、天然ガス価格を上昇させたという。また海水の流れの強さや方向が変わり、分岐点がはっきりしなくなることで魚などの海の生き物にも影響が出るとされている。

 気象学の専門家は「エルニーニョが話題になる一方で、ラニーニャには十分な注目が集まっていない」と指摘。科学誌「Nature」は「破壊的な影響を及ぼすラニーニャ現象の発生頻度が高まる可能性を真剣に検討しなければならない」という内容の記事を掲載した。「エルニーニョ」「ラニーニャ」ともスペイン語で「神の子」を意味するそうだ。気象現象は結局のところ確実な予測はできない。できることといえば、猛暑に備えて今から準備をすることぐらいだろうか。 (編集担当:久保田雄城)