米アップルコンピュータ社のスマートフォン「iPhone」の生産減少が続いている。iPhone製造に伴ってアップルコンピュータとの取引で利益を上げてきた企業は幅広い業種に広がってきた。が、その販売減は業績悪化に直結する。iPhoneの販売動向が企業と株式市場の関心を集めている。昨年末に急浮上した“アップルリスク”は、iPhone関連サプライヤーの今期企業業績悪化を招く。
国内外のiPhone関連サプライヤーは、今年1~3月に続き、4~6月も前年比3割減程度の減産を継続する。昨秋発売の新型モデル「iPhone 6s/6s plus」売上が想定を下回るためだ。販売をテコ入れするために、3月に比較的廉価なモデル「SE」を追加発売するも、販売台数が期待通りに伸びていないため、アップルが減産期間を延長する方針を部品メーカーに伝えたとされる。高性能部品を供給する国内メーカーの工場は稼働率が低下しており、収益圧迫につながるのは避けられない状況だ。
かつて、新型を発表すれば売れたiPhoneだが、現在、機種ごとの人気にバラつきがあり、売れ筋が見えない。昨年末に「1~3月、3割減産」と伝わると、株式市場では“アップルリスク”が喧伝され始めた。
iPhone減速の影響は大きい。アップルが毎年公表する「サプライヤーリスト」の2015年版によると、その主要取引先企業約200社のうち40社強を日本企業が占めている。iPhoneの減産が長引けば液晶パネルを供給するジャパンディスプレイやシャープ、カメラ用画像センサーのソニー、半導体メモリーの東芝といった国内メーカーが影響を受ける。各社の工場稼働率は低下しており、4~6月期の収益見通し下方修正要因となる。
ただ部品供給メーカーとしては、「受注が回復する時期に備えておきたい。現在の受注減に合わせた合理化には踏み切りにくい」という。収益をけん引してきたスマホ向けのセンサーで世界首位のソニーだが、昨年11月以降に急ブレーキがかかった。ソニーはアップルに専用設計の部品を提供しており、他社への転用が難しく、需要が減った影響は大きい。
ただ、例年9月に発売してきた新型iPhoneの発売時期を前倒しすれば、6月下旬ごろから次期モデル向けの部品生産が活発になる可能性があるとの見方も。
年間生産15億台とも言われるスマホのグローバル市場は成長が鈍化している。市場を切り開いてきたアップルコンピュータにも停滞感が漂い始めている。今秋登場する新型iPhoneに新しい魅力が付加されないと、さらなる停滞を招くかもしれない。企業も投資家も“アップルリスク”への備えが、その収益を左右する。(編集担当:吉田恒)