日経BPコンサルティングが2015年8月にまとめた「携帯電話・スマートフォン“個人利用”実態調査2015」によると、スマートフォンの国内普及率は49.7%で、今や国民の約半数がスマホを所持しているという結果となった。しかし、その一方で2015年1-12月期のスマートフォンの総出荷台数は前年比6.6%減の3577万台(MM総研調べ)となっている。
機器自体の耐用年数が長くなったこともこの要因の大きな理由だが、スマートフォン黎明期に比べて、買い替えを促すだけの大きなインパクトに欠ける商品が少なく、買い替え需要が減っていることも影響を及ぼしているだろう。
スマホを買いかえる際のポイントは人それぞれの使い方やスタイルにもよるが、基本性能や通信機能が拮抗している昨今、デザイン性や駆動時間といった最もアナログな部分への訴求が全体的に高まっているのではないだろうか。とくに10代、20代の利用者では1日のスマートフォン利用時間が平均で2時間を超えるともいわれており、バッテリーの長寿命化や長時間駆動は大きな魅力だ。
スマートフォンやタブレットには、エネルギー密度の高いリチウムイオンバッテリーが使用されている。リチウムイオンバッテリーは、、満充電時には4.2V前後の出力電圧が可能だ。しかし、USBやHDMI、オーディオ用スピーカーなどを動作させるためには5Vが必要となる。つまり、満充電時であっても、0.8Vほど足らないわけだ。そこで、昇圧型のDC/DCコンバータを使い、バッテリーの出力を5Vに持ち上げることで、これらのアプリケーションを使用可能にしている。ところが、バッテリー残量が少なくなるにつれ、システムへ入力されるバッテリーの出力電圧は徐々に下がってしまうので、低電圧下では動作ができなくなってしまうのだ。つまり、バッテリーの更なる長寿命化を実現するには、可能な限り低い電圧で、5Vの安定した昇圧を行える技術が必要であった。また、モバイル機器の宿命的な課題として、小型、高効率、大電流対応が挙げられるが、これら全ての欲求を高いレベルで満たす製品が、これまで存在していなかった。
そんな中、ローム株式会社<6963>が2.5Vと低い入力電圧でも5Vの出力が可能な昇圧DC/DCコンバータ「BD1865GWL」を開発している。低電圧駆動を極限追求することにより、モバイル機器のバッテリー長寿命化に貢献することが期待されている。また、動作の切り替えが激しいスマートフォンやタブレットに最適なPFM/PWMの2つのモードを搭載。負荷に合わせて最適なモードに自動的に切り替えることで全負荷領域において90%クラスの高効率を実現。さらに、Mixing PWMモード選択時には、オーディオアプリケーションで気になるスイッチングノイズによる音鳴りを防止し、オーディオ機器など音質を重視するアプリケーションに効果を発揮するという。
2007年にAppleのiPhoneが発表されてから約10年。初期のスマホと比べると、基本性能も駆動時間も格段に向上している。しかし、今回のDC/DCコンバータ「BD1865GWL」のような地味ではあるものの優れた技術の結晶でもある部品が登場すると、まだまだ向上の余地が残されているようにも思え、期待してしまう。(編集担当:藤原伊織)