■北米、中国で自動車向けの好調が続いた
5月10日、工業用ゴム大手の住友理工<5191>は2016年3月期本決算を発表した。
国際会計基準(IFRS)に基づく連結決算は、売上高は前年同期比5.9%増の4244億円、営業利益は57.3%増の128億円、税引前利益は84.4%増の118億円、当期利益は74.0%増の50億円。最終当期利益は154.3%増(約2.5倍)の29億円で、増収、大幅増益の好調な決算期だった。年間配当は18円で据え置き。
2017年3月期の業績見通しは、売上高は3.4%減の4100億円、営業利益は4.9%増の135億円、税引前利益は5.1%増の125億円、当期利益は39.2%増の70億円、最終当期利益は72.4%増の50億円という減収、最終大幅増益。予想期末配当は1円増配して19円としている。
セグメント別では、自動車用品の分野は、外部売上高は7.3%増の3691億円、セグメント利益は105.6%増(約2倍)の116億円だった。国内では「軽」を中心に自動車販売台数が伸び悩んだが、新型車種の立ち上げに伴う内装品の販売が好調。2015年から量産を開始した燃料電池車(FCV)のFCスタック向けのゴム製シール部材の販売が伸びて増収。海外では自動車販売が好調な北米市場、小型車優遇税制の導入で販売が上向いた中国市場で売上高が伸びた。
一般産業用品の分野は、外部売上高は2.8%減の553億円、セグメント利益は51.5%減の12億円だった。産業資材部門では中国で景気減速を背景にインフラ需要が大きく落ち込んだことで、建設・土木機械向け高圧ホースの販売が前期実績を下回った。住宅部門では地震対策用制震ダンパーや集合住宅向け遮音デバイスの国内販売が前期実績を上回っている。IT関連製品では、プリンター向け機能部品など事務機器向け精密部品分野では、中国や新興国でプリンター消耗部品の販売が伸び悩み、低調に推移した。
地域別の売上高ではアジアは+13%と大きな伸びを見せ、利益でも+36%と稼ぐ。北米は売上+9%で堅調。国内は+3%、ヨーロッパは-2%だった。
■1月に「グローバル本社」を設置
住友理工は中期経営計画「住友理工グループ2015年VISION」の中で成長目標「Global Excellent Manufacturing Company」を掲げている。既存事業では「グローバルでの競争力強化」(自動車用品)、「新興国向け製品の拡充」(ITエレクトロニクス)、「グローバル拡販の強化」(産業資材)を重点実施項目に挙げている。
今年1月、世界23ヵ国、105の事業拠点を統轄するため名古屋駅前に「グローバル本社」を新設した。ここは連結経営管理の強化、グローバルに通用する人材の採用・育成を行い、ダイバーシティへの理解を高め、グループ全体で約8割が海外で働いている従業員の意識改革を促して、真のグローバル企業を目指す拠点である。
そのようにグローバルな開発・生産・販売網を拡充・強化するとともに、原材料の調達や生産体制の見直しなどのコスト削減を進める「Global Cost Innovation(GCI)活動」を引き続き推進して、収益力の改善・向上を図っている。
事業再編の一環として、産業用ホース事業を、100%子会社(製造子会社)のTRI京都に10月1日付けで会社分割(簡易吸収分割)で譲渡することを決定している。その目的はグループの経営資源の集約、意思決定の迅速化、事業の効率化による収益力の向上、事業基盤の強化である。(編集担当:寺尾淳)