【ダイキン工業の2016年3月期決算】円高の影響を吸収して今期も増収増益を維持。「買収のダイキン」も海外で動き出す

2016年05月16日 07:32

 5月10日、産業用空調機器では世界のトップシェアを占めるダイキン工業<6367>が決算を発表し、前期は増収、2ケタ増益で過去最高を更新と業績好調だった。今期は為替の円高が営業利益を265億円押し下げるものの、増収増益は維持できると見込んでいる。円高が逆に追い風になる海外M&Aを活発化させて、世界の市場でさらなるシェアアップを狙う。

 ■唯一、目算通りにならなかった中国市場も底を脱しつつある

 2016年3月期の業績は、売上高6.7%増、営業利益14.3%増、経常利益7.9%増、当期純利益14.5%増の増収、最終2ケタ増益。売上高も利益項目も揃って過去最高を更新した。年間配当は20円増配して120円。

 主力の空調・冷凍機事業セグメントの売上高は6.8%増の1兆8280億円、営業利益は13.7%増の1937億円。国内の業務用は建築着工の伸び悩みで販売台数は減少したが、売上高はほぼ横ばい。国内の住宅用もほぼ横ばい。好調が続く北米では省エネ性能が改めて支持されダイキンのブランドが浸透した。ヨーロッパは住宅用が大きく伸び、業務用もプラス。ヒートポンプ式温水暖房機器もEUの環境規制強化が追い風になって伸びている。中東・アフリカは原油安の影響を受けながら販売を伸ばした。唯一、中国は大型の不動産投資が減って当初見通しよりも厳しい環境に置かれ、販売はかろうじて横ばいだったが、十河政則社長兼CEOは「底を脱しつつある」と述べている。

 ■アメリカに続いてイタリアでも戦略的なM&Aに打って出た

 2017年3月期の業績見通しは、売上高1.8%増、営業利益1.0%増、経常利益3.6%増、当期純利益2.2%増。前期よりも増収幅、増益幅は圧縮されるが、それでも最終利益は4期連続で過去最高益を更新する見込み。予想年間配当は120円で据え置き。

 地域別では新興国で経済減速が懸念されるが、北米でもヨーロッパでも中東・アフリカでもアジアでも、主要国では現地通貨ベースでは増収になる見込み。問題は為替で、想定為替レートはドル円110円、ユーロ円125円。円高が営業利益を265億円押し下げるものの、銅やアルミや鉄などの主要原材料安、管理部門のコスト削減など固定費の圧縮でカバーし、営業増益は確保できる見通し。

 今期、活発になりそうなのが海外M&A戦略。4月に換気フィルターなどを製造するアメリカの換気装置大手フランダース(507億円)の買収を完了した。北米市場では2012年にグッドマン・グローバルを約3000億円で買収したが、これは家庭用空調装置が中心。産業用途に強いフランダースを加えることでシェアのさらなる拡大を目指す。販売力を強化し、北米で現在約5500億円の売上高を5年後の2021年3月期、8000億円を超える水準まで伸ばす計画。最終目標はユナイテッド・テクノロジー(UTC)など並みいる大手を追い抜いて、約4兆円の北米市場でトップシェアを獲得すること。

 ヨーロッパについては4月28日、イタリアの業務用冷凍・冷蔵設備メーカー、ザノッティを6月末をメドに買収すると発表している。買収額は9800万ユーロ(123億円)。海外M&Aでは、輸出企業にとっては逆風の為替の円高が「強い円」という追い風に変わる。円ベースの買収額が安くなるチャンスをとらえ、「買収のダイキン」が動き出す。(編集担当:寺尾淳)