5月16日、三大メガバンクの2016年3月期決算が出揃った。最終利益はみずほは9.6%増だったが、三菱UFJは8.0%減、三井住友FGが14.2%減。本業のもうけを示す実質業務純益はいずれもマイナスだった。
「預金と貸付の金利差で収益をあげる」という銀行の本業をめぐる環境は悪化している。国内で日銀のマイナス金利政策が今後も続けば、金融機関の間の貸付競争が激しいため貸付先から金利引き下げ要請が強まり、貸出利ざやが圧縮されて利益を出すのはますます厳しくなる。以前は海外での貸付や新興国などの海外事業で得た収益で補うことができたが、2016年3月期は新興国の経済が減速し、さらに1~3月期に為替の円高が進んだため円ベースの利益が目減りするようになった。さらに最近の株安で株式など保有有価証券の評価損益が減少し、有価証券売却益も得にくくなっている。投資信託など金融商品販売による手数料収入も思うに任せなくなっており、メガバンクの収益環境はまさに「八方ふさがり」の状況に陥っている。
今期の業績は、三菱UFJ、みずほは2ケタの最終減益を見込んでいる。三井住友FGは最終増益見通しだが、三大メガバンクが入り込んだトンネルの出口はまだ見えない。
■実質業務純益、貸出利ざやが縮小
2016年3月期の実績は、三菱UFJ<8306>は経常収益1.3%増、経常利益10.1%減、当期純利益8.0%減の増収減益。3期ぶりの最終減益。1株当たり利益(EPS)は68.5円。年間配当は18円で据え置いた。三菱東京UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行2行合算の実質業務純益は4%減の1兆811億円で、国内の貸出利ざやは金利の低下で0.07ポイント減の1.08%と目減りした。海外で貸出金が増えても円高に相殺されてしまい、円ベースの収益は目減りしている。
みずほ<8411>は経常収益1.1%増、経常利益1.3%減、当期純利益9.6%増の増収、経常減益、最終増益。年間配当は7.5円で据え置き。みずほ銀行、みずほ信託銀行2行合算の実質業務純益は4.5%減の6884億円。日銀のマイナス金利導入による影響が約60億円出たという。最終増益の要因は保険など金融商品販売の手数料のような非金利収入が約300億円伸びたことと、取引先の持ち合い株の解消売りの売却益によるもの。
三井住友FG<8316>は経常収益1.6%減、経常利益25.4%減、当期純利益14.2%減の減収減益。年間配当は10円増配して150円。三井住友銀行単独の実質業務純益は14%減の7287億円。国内の貸出利ざやは0.08ポイント減の1.21%まで縮小した。今まで新興国で収益をあげられたが、その景気減速で三井住友銀行が40%出資したインドネシアの年金貯蓄銀行(BTPN)の株価下落に伴い減損損失570億円を計上。海外向け融資全体でも採算悪化で340億円の引当金を計上した。世界的な株安により傘下の証券会社は大幅減益。国内の消費者金融子会社2社の過払金返還に備えた引当金を1410億円積み増したことも業績に影響した。
■中期経営計画の目標数字が遠ざかる
2017年3月期の業績見通しは、三菱UFJは当期純利益の目標は10.6%減の8500億円。予想年間配当は18円で据え置き。発行済株式数の1.67%に相当する2億3000万株、1000億円上限の自社株買いの実施を発表したが、1.67%の自社株買いでは10.6%の最終減益に及ばず、1株当たり利益(EPS)はさらに低下し、2018年3月期の中期経営目標、EPS84.2円から遠ざかってしまう。
みずほは当期純利益10.5%減の最終2ケタ減益を見込む。予想年間配当は7.5円で据え置き。日銀のマイナス金利導入に伴う影響が400億円程度出て、それに次期システムの導入関連の経費負担が加わって利益が圧迫される見込み。
三井住友FGは経常利益3.5%増、当期純利益8.2%増で最終増益を見込む。予想年間配当は150円で据え置き。海外での減損処理や消費者金融子会社の過払金引当金の積み増しの影響が消える反動と、持ち合い株売却による売却益が寄与するためだとしている。(編集担当:寺尾淳)