林業が再び花形産業へ? 住宅メーカーが仕掛ける純国産木造住宅  

2016年05月21日 17:11

相模原 (1)

積水ハウスは木造住宅「シャーウッド」の新機軸として、「グラヴィス リアン(凛庵)」の販売を発表した。

 積水ハウス株式会社<1928>は2016年4月28日、木造住宅「シャーウッド」の新機軸として、近年再評価されトレンドになっている「和」の住まいや文化を現代風デザインに表現し、モダンで日本的な外観や暮らしを提案する、「グラヴィス リアン(凛庵)」の販売を発表した。

 「和」や「モダン」というと、まずはやはり、外観や内装のデザイン的なことばかりを想像する。「グラヴィス リアン」も、オリジナル陶版外壁「ベルバーン」に、日本の伝統的な装飾技法の一つである「櫛引き」をデザインに採用した「クシビキボーダー」と透明感ある新色「遠州茶」「織部黒」を開発し、焼き物ならではの趣ある「和」の外観を演出しているが、特筆すべき点はそこだけではない。同商品の最大の特長は、住宅の主要構造部となる柱に日本全国の銘木の産地と連携し、秋田杉、吉野杉、美作檜など、オーナーの好みに応じた国産ブランド材を標準採用するという点だ。

 日本は、国土面積の67%を森林が占める世界有数の森林大国でありながら、木材の自給率が約3割しかなく、残りの8割を輸入材に頼っている。その昔、戦後復興と高度経済成長期には、林業は花形産業の一つだった。ところが、安価な輸入材や、安いだけでない高品質で安定供給が可能な輸入材が入ってきた結果、徐々に人件費が高騰していくにつれ衰退していった。そしていつの間にか、若者たちの間では花形どころか、作業が重労働であるうえ不況下にある業界という真逆のイメージが定着してしまった。ところが今、日本の林業を見直し、近い将来、花形産業への復活を果たすという見方をする専門家が増えてきているのだ。

 その理由の一つは、60億立方メートルともいわれる膨大な「森林蓄積」(立木の材体積)にある。その背景には、戦後の復興と高度成長期に、木材需要が急増したことから、木材が乱伐され、国産木材が不足したことがある。当時の日本政府は急きょ「拡大造林政策」を行って、天然林を伐採した跡地や原野などを針葉樹中心の育成林に置き換えることで対応しようとしたが、育成林が成長している最中に輸入材の台頭などにより国産木材の需要が激減してしまった。つまり、日本には今まさに伐採時期にある優良な国産木材が、文字通り山のようにあるのだ。

 今回、積水ハウスが発売した「グラヴィス リアン」の中でも、柱だけでなく梁にも国産ブランド材を採用した「シャーウッド純国産材プレミアムモデル」は、「第一回ウッドデザイン賞」優秀賞 林野庁長官賞を受賞している。住宅最大手のハウスメーカーである積水ハウスがこれまで以上に本気で、国産木材にこだわった住宅を展開することで、住宅業界全体に波及し、これからの日本の林業を後押しする大きな流れになってほしい。(編集担当:藤原伊織)