経済産業省の発表によると、日本の環境ビジネス市場は2005年において60兆円規模だったものが2015年には80兆円超、さらに2020年には90兆円超の規模にまで拡大すると見込まれており、循環型経済社会の構築に向けた取組みが一層期待されている。
中でも、近年は太陽光発電システムや産業用の各種電源装置、電気自動車などのパワーエレクトロニクスの分野において益々、省エネ性能が重要視される傾向にあり、それを実現する電力変換効率の高いパワーデバイスがより一層、望まれている。
高効率パワーデバイスといえば、SiC(シリコンカーバイド)やGaN(窒化ガリウム)などがあるが、とりわけ注目されているのがSiCデバイスだろう。従来のSi(シリコン)デバイスと比べて、絶縁破壊電界強度が10倍、バンドギャップが3倍と格段に性能が優れており、インバータの小型化や損失低減に加え、発熱が少なく、高温にも耐えるため、冷却システムの容量も抑えることができる。
トヨタグループでも、豊田中央研究所とデンソー<6902>が1980年代からすでに基礎研究をはじめており、トヨタ自動車<7203>も2007年からそれに加わり、実用化に向けた技術開発を共同で進めている。将来的にはハイブリッド車の燃費10%向上を目指しているという。
また、ローム株式会社<6963>もSiCデバイスの開発に力を入れている半導体メーカーとして知られているが、今年4月には、パソコンやサーバー、エアコンなどのハイエンド電源機器に最適で、動作時の効率を大幅に改善する、SiC-SBD (SiC ショットキーバリアダイオード)「SCS3 シリーズ」の開発を発表し、注目されている。同製品は、新規構造を採用することで、同社がすでに量産化しているSiC-SBD で実現した業界最小の順方向電圧(VF=1.35V、25℃)の特性を維持したまま、同時に高サージ電流耐量を確保したもので、パソコン、サーバー、エアコンなどのハイエンド電源機器のピーク電流を抑えて省エネ化に貢献するという。
次世代パワー半導体の技術開発は、日本だけでなく世界的な関心事だ。この数年のうちに、これらの次世代パワー半導体を使った製品が市場にどんどん投入されてくるだろう。日本の技術が世界の省エネにどれだけ貢献できるのか期待したい。(編集担当:松田渡)