6月5日、スペインのカタルニア・サーキットにてMotoGP第7戦、カタルニアGPが行われた。カタルニア・サーキットは1周4,727m、高速コーナーが連続するハイスピードサーキットで、激しいブレーキング勝負が見どころである。
だが、今回のカタルニアGPでは例年使用されているMotoGPのコースから、F1で使用するコースに変更された。これは大会初日、Moto2 クラスのフリー走行中にルイス・サロン(SAG)の死亡事故が発生したためだ。事故が発生したコース後半のスピードを落とすために取られたこの措置により、サーキットの全長は4,655mに短縮され、1周のタイムも3秒ほど遅くなった。
この異例の事態により、ライダーもチームも決勝レース直前までコースの攻略やセッティングに追われることなり、レースの展開も読みにくくなった。そんな中迎えたMotoGP決勝は晴天のドライコンディション。気温27℃、路面温度は48℃と非常に路面温度の高い状態でのレースとなった。
まず、絶好のスタートを切りホールショットを決めたのは2番グリッドスタートのホルヘ・ロレンソ(モビスターヤマハMotoGP)。ポールポジションを獲得したマルク・マルケス(レプソルホンダ)もまずまずのスタートで2番手につける。5番グリッドスタートのバレンティーノ・ロッシ(モビスターヤマハMotoGP)は一時8番手までポジションを落とすなど、スタート直後は多くのマシンが入り乱れる混戦となった。
スタート直後の混戦は徐々に落ち着き、トップのJ・ロレンソをM・マルケスが追い、3番手にはダニ・ペドロサ(レプソルホンダ)が付ける展開となった。V・ロッシは2周目には4番手まで順位を上げ、3周目には3番手のD・ペドロサを交わして3位に浮上。先を行くJ・ロレンソとM・マルケスを猛追し始めた。V・ロッシは6周目にはM・マルケスを捕らえて2番手に、7周目にはJ・ロレンソを交わしてトップに躍り出た。
V・ロッシに交わされたJ・ロレンソはその後M・マルケスにも先を許し、ペースを上げることができない。9周目にはD・ペドロサにも先を許し、M・ビニャーレス、A・イアンノーネなどと4番手争いを演じることとなった。
レース中盤はV・ロッシとM・マルケスが抜け出す一方、4番手争いは激化。接触ギリギリのバトルが展開された。
レースが大きく動いたのは17周目。5番手のJ・ロレンソのマシンの後輪に6番手のA・イアンノーネが突っ込む形で接触、クラッシュしたのだ。これによってJ・ロレンソ、A・イアンノーネの両者がリタイアを余儀なくされ、チャンピオンシップを争うJ・ロレンソにとっては非常に痛い結果となってしまった。
先頭を行くV・ロッシは安定した走りで好ペースを維持していたが、レース終盤M・マルケスがチャージし、V・ロッシに肉薄。23周目、残り3周というところでM・マルケスがV・ロッシを交わしてトップに立った。だが、V・ロッシも易々と先頭は譲らなかった。続く24周目にV・ロッシがM・マルケスを抜き返してトップを奪還。その後は力を温存していたかとも思えるハイペースでV・ロッシは2位のM・マルケスに2.652秒差をつけて今季2勝目、カタルニアで7度目の優勝を手にした。
3位にはD・ペドロサ、4位にはM・ビニャーレス、5位にはポル・エスパルガロ(モンスターヤマハテック3)。
レース後、複数の選手がアクシデントで亡くなったルイス・サロンのゼッケン39を掲げ、また表彰式でも選手が追悼のTシャツを着るなど、今回のカタルニアGPは痛ましい事故を悼むものとなった。
さて、今回の結果によってより混沌としてきたのがチャンピオンシップだ。前戦までのポイントリーダー、J・ロレンソ(115ポイント)はリタイア、ノーポイントに終わった。これに対し、今回2位のM・マルケスは20ポイントを獲得し、125ポイントでランキングトップに返り咲いた。また、ランキング3位のV・ロッシも今回の優勝で25ポイント加算し103ポイント。J・ロレンソとは12ポイント差、M・マルケスとは22ポイント差とまだまだチャンピオンシップを十分に狙える位置につけている。
今季のMotoGPは中盤戦に入ったが先はまだまだ読めない。今回のカタルニアGPでは遺恨のあるV・ロッシとM・マルケスは正々堂々と勝負し、共に好調ぶりを見せつけてくれた。J・ロレンソはカタルニアGPでは不運なリタイアとなってしまったが、M・マルケスとの差はまだまだ僅差で、場合によっては次戦での逆転も十分に可能だ。
次戦は6月26日、TTサーキット・アッセンで行われるオランダGP。“ダッチウェザー”と言われる気まぐれな天候によって大荒れになることも多いグランプリだけに予想は非常に難しい。このままM・マルケスが逃げるのか、それともJ・ロレンソやV・ロッシがM・マルケスを捕らえるか。はたまた思わぬダークホースが出現するのか、今季は予想をするだけでも楽しみの尽きない面白いシーズンとなっている。(編集担当:熊谷けい)