4月10日、MotoGP第3戦アメリカズGP決勝レースが行われた。テキサス州オースティンにあるサーキット・オフ・ジ・アメリカズは、全長5,500m、反時計回りのレイアウトで、1,200mという長いメインストレートとヘアピンやブランドコーナー等多彩なコーナーを有している。さらに、サーキットの高低差が最大41mと起伏のあるレイアウトでマシンの性能とライダーの技量が大きく問われるサーキットでもある。
気温26℃、路面温度34℃、ドライコンディションで迎えた決勝レース、2番グリッドからスタートしたホルヘ・ロレンソ(モビスターヤマハMotoGP)は絶好のスタートを切り、ポールポジションスタートのマルク・マルケス(レプソルホンダ)に先行したが、1コーナー後にM・マルケス、アンドレア・ドビツィオーゾ(ドゥカティ)に先を許し、ここから上位陣は目まぐるしく順位を変える展開となった。
先頭集団の上位6台までが接近戦を繰り広げていた3周目、6番手を走行していたバレンティーノ・ロッシ(モビスターヤマハMotoGP)が2コーナーで転倒。早々にレースを諦めてしまった。
序盤から波乱の展開となった今レースだが、先頭でレースを引っ張るM・マルケスは安定した走りを見せて、集団から頭一つ抜け出した。この時点で2番手争いはJ・ロレンソ、A・ドビツィオーゾ、ダニ・ペドロサ(レプソルホンダ)に絞られたが、ここでまた波乱が起こる。7周目、4番手につけていたD・ペドロサが1コーナーで転倒。同コーナーでややラインを外したA・ドビツィオーゾにこのD・ペドロサのマシンが側面から激突するアクシデントが発生したのだ。
このアクシデントによって、A・ドビツィオーゾはリタイアを喫した。D・ペドロサは最後尾でレースに戻ったものの、12周目にはピットに戻りレースを諦めている。
今回のアメリカズGPでは転倒者が続出。8周目にはカル・クラッチロー(LCRホンダ)とブラッドリー・スミス(モンスターヤマハテック3)が同じ場所で転倒している。
D・ペドロサとA・イアンノーネの転倒アクシデントによって、2番手J・ロレンソは単独走行となり、3番手にアンドレア・イアンノーネ(ドゥカティ)、4番手にアレイシ・エスパロガロ(チームスズキエクスター)、5番手にマーベリック・ビニャーレス(チームスズキエクスター)が浮上し、状況は大きく変わった。
上位の3選手が姿を消す中、先頭を行くM・マルケスは先頭を独走し、レース中盤で2番手のJ・ロレンソに対して5秒以上のアドバンテージを築いた。
また、11周目には5番手を走行していたM・ビニャーレスがチームメイトのA・エスパロガロを抜いて4番手に浮上した。
中盤以降は大きな波乱もなく、M・マルケスが2位のJ・ロレンソに6秒以上の差をつけて、前戦アルゼンチンGPに次ぐ今季2勝目を手にした。3位はA・イアンノーネ、4位はM・ビニャーレス、5位はA・エスパロガロ。M・ビニャーレスの4位という結果は、最高峰クラスでは自己最高位である。
M・マルケスは、今回の勝利でポイントを大きく伸ばし、2位のJ・ロレンソに対して21ポイント、3位のV・ロッシに対して33ポイントの差をつけ、チャンピオンシップにおいて頭一つ抜け出した形となった。
だが、今シーズンはまだ序盤。この先何が起こるかはまだわからない。今回のレースだけを見ればM・マルケスがかつての速さを取り戻したに見えるが、サーキット・オブ・ジ・アメリカズはM・マルケスが最も得意とするコース。このサーキットで行われたレース、M・マルケスは4連続ポール・トゥ・ウィンと絶好調だが、この結果だけで今シーズンの先行きを判断するのは難しい。
今シーズンはコンストラクターズポイントでもホンダとヤマハは大接戦。ホンダ66ポイントに対してヤマハ65ポイントとわずか1ポイント差、3位のドゥカティも49ポイントとその差もそれほど大きくはない。
また、今回のレースでは上位陣の転倒によって順位が大きく繰り上がったスズキ勢だが、アクシデントがなくとも十分に上位に食い込むだけの力は有している。今シーズンの伏兵として波乱を巻き起こす可能性はまだ十分にある。
MotoGP2016年シーズンは次戦4月24日のスペインGPからヨーロッパラウンドに入る。9月まで続くこのヨーロッパラウンドで今季の大勢がはっきりしてくるだろう。M・マルケスやJ・ロレンソなどスペイン人ライダーにとっては母国GPとなるスペインGPだけに、その展開を予想するファンの楽しみも大きい。(編集担当:熊谷けい)