農業の高齢化問題と後継者不足が深刻な中、農業機械メーカーがITを融合した最先端の機械やサービス開発に熱を入れている。無人運転トラクターなどの開発を進めて省力化やコスト競争力の面からサポートしたい考えだ。
農業の高齢化問題と後継者不足が深刻だ。2015年の調査によると、平均年齢は5年前より0.5歳高い66.3歳となり、農業就業人口は209万人と5年前より2割減っていることがわかった。1985年には542万人いたが、30年間で6割減ったことになる。
年齢別の内訳を見てみると、65歳以上が64%を占め、39歳以下は7%にも満たない。5年前よりも70~79歳の落ち込みが激しく、15~29歳の農業就業人口は5年前より26,000人少ない63,000人であった。
70年代から農業の高齢化が危惧されていたが、その世代がさらに持ち上がり、高齢というよりも老齢になっているのが現状だ。原因としては後継者不足が挙げられる。脱サラして農業を営む人もいるが、農業用の機械などの購入に相当な初期費用が必要になる。条件が揃っていないと赤字になるケースも珍しくないというのだから、農業をするために借金までする若い世代はそういないだろう。農業にメリットを増やさないことには、若い世代が増えることはなさそうだ。
だが、これをチャンスと捉える企業もいる。人手足や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の発効をにらんで、クボタ<6326>や井関農機<6310>など農業機械メーカーがITを融合した最先端の機械やサービス開発に熱を入れているという。政府は農地を集約して大規模化することで、競争力の強化を狙っており、農機メーカーも無人運転トラクターなどの開発を進めて省力化やコスト競争力の面からサポートを図ろうとしている。
2015年10月に井関農機が開設した「夢ある農業総合研究所(夢総研)」では、未来の農業を見据えて、ITやロボットを活用した農機や抵抗コスト栽培の研究などを行っている。15日に開かれた同研究所の見学会では、開発中のスマート農機「ロボットトラクター」が公開された。衛生利用測位システム(GPS)を用いてリモコンで操作することで、無人での農作業を可能にした。ロボットトラクターの後ろを有人トラクターが追いかければ、通常の2倍もの作業ができる。
クボタも無人運転トラクターの開発を行い、18年度の実用化を目指す。今月にNTTとの提携を発表し、NTTの人工知能(AI)やモノをインターネットで結ぶ「IoT」の技術などを組み合わせて、クボタが提供する農機や営農支援システムを高度化するという。
ロボットの力だけで農業の高齢化問題を解決するのは難しいかもしれないが、農業の衰退を食い止めることができれば望みはある。高齢化とTPPで揺れる農業界に明るいニュースをもたらしてくれることを期待したい。(編集担当:久保田雄城)