ソフトバンクのグループ会社ソフトバンク・テクノロジー は、農業支援のITベンチャー会社、テラスマイルとの業務提携を発表した。両社は農業支援サービスを共同開発し、9月よりサービス提供を開始する予定だ。
テラスマイルは、宮崎県を拠点として2014年に起業した。農業経験者が多いという社員の知見や農家からのヒアリング、JAや農業生産法人とも協力して収集分析したデータを基にして、農家自身が経営を把握、予測し、稼ぐ場と時期を推測することができる様にデータテクノロジーを駆使した支援を提供している。主には分析ツールを用いた農業経営のコンサルティングやシミュレーション、企業の新規事業アドバイスを行う。
テラスマイルの活動の背景には、農家が抱える経済的問題への危機感がのぞいて見える。一般的に従来の農業は、作物の出荷時に、その時期に売ればそれがどれ位の収入になるかの予測がつけにくく、環境に大きく影響される、いわば受け身の経営となっていた。テラスマイルは、九州の若手農業従事者を主たるターゲットとして、これからの世代の農業就業者の農業所得を増やして生活をドラスティックに改善し、更なる若手の参画や後継者問題も好転させたい、との趣旨で活動を行ってきた。
ソフトバンク・テクノロジーとの協業内容も、農家の売り上げやコストの見える化サービス、AIの活用による有利な販売・取引条件の分析など、ほぼこれまでの軌道の延長となる模様だ。具体的には、利用者が出荷データをスマートフォンに入力することによって、AIで天候や市況を加味した売り上げ試算を確認できたり、青果の値動き予測を利用して出荷タイミングでの最適化が図れる様な支援を提供する。
9月から開始されるサービスは、初期費用はかからず、売り上げ予測などの一部の支援データも無料で提供される予定だ。農業機器の投資効果試算などが有償サービスとなる。6月6日付けの業務提携の発表により、ソフトバンク・テクノロジーの株価は値を上げ、年初来高値を更新した。
新たな顧客層の取り入れは、ソフトバンク・テクノロジーとテラスマイルにとっても、更なるデータ蓄積の好機だろう。それは、より精度や応用範囲を高めたシュミレーションを可能とする。農業の活性化は国として喜ばしいことではないか。企業と農家のWINWINの好循環に繋がるのであれば、この様な事業はぜひ軌道に乗ってほしいと願う。(編集担当:久保田雄城)