来期20周年を迎える楽天、海外事業に苦戦

2016年06月21日 07:26

画・来期20周年を迎える楽天、海外事業に苦戦

来期に創業20周年を迎える楽天。国内屈指のモール型ECとして、圧倒的とも言える地位を得ているが、海外事業に苦戦を強いられている。10ヵ国・地域以上に進出した海外拠点は、台湾や米国などと合わせて5ヵ国・地域にまで縮小。

 来期に創業20周年を迎える楽天<4755>。国内屈指のモール型ECとして、圧倒的とも言える地位を得ている。ECモールの「楽天市場」での決済に同社の「楽天カード」を使うことで、通常よりもポイントを多く獲得できるというサービスが消費者に支持され、グループ内の複数のサービス利用を促して雪だるま式に収益を拡大するビジネスモデルを確立した。

 順風満帆に見える同社だが、海外事業では苦戦を強いられている。2013年にスペインに進出した際、「勝つは楽天かAmazonか」と期待が大きかったが、3年を費やしても知名度を上げることができず、撤退。Amazonは11年にスペインに進出して急激な成長を遂げ、800人の従業員を抱えている。対して楽天はバルセロナに30人の従業員を抱えているのみで、最初から勝敗が決まっていたようなものだった。

 また、イギリスでも撤退を余儀なくされ、オーストラリアの拠点を閉鎖してサービス提供機能をドイツに統合。今後は経済資源をフランスとドイツに集中させて、欧州全体で従業員100人前後を削減する方針だ。フランスとドイツはスペインやイギリスに比べてAmazonの市場占有率が低いため、市場拡大の余地があるかもしれない。

 08年に進出した台湾では、「台湾楽天カード」の発行が実現し、有力ECモールの一角に腰を据えることができたが、欧州では海外企業の認可に時間がかかるなどの壁があり、日本と同様の「楽天経済圏」を形成できなかった。

 アジアでも見直しを進め、インドネシア、マレーシア、シンガポールのECモールを3月に閉鎖。タイでは4月にECモール事業会社を売却している。10ヵ国・地域以上に進出した海外拠点は、台湾や米国などと合わせて5ヵ国・地域にまで縮小され、先行投資を伴う拡大路線から脱して着実に収益貢献できるように体質変換を急ぐと見られる。

 国内においては、ポイント費用を積極的に投下した結果、16年1~3月期は売上高が前年同期比14%増の1803億円を記録したが、営業利益が同21%減の229億円と増収減益に終わった。国内事業の成長を再加速させながら海外事業で成功を収めたいところだが、一筋縄ではいかなさそうだ。(編集担当:久保田雄城)