新しい事業の生態系を作りだす、「プラットフォーム戦略」とは?

2016年03月19日 20:11

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プラットフォーム戦略の定義としては「複数の関連するグループを同じ舞台(プラットフォーム)に載せることで、外部のネットワーク効果を生み出し、企業の枠を超えた、新しい事業のエコシステム(生態系)を作り出す」経営戦略のこととされている

 最近、何かと話題にのぼることが多いビジネス用語に「プラットフォーム戦略」という言葉がある。プラットフォーム戦略の定義としては「複数の関連するグループを同じ舞台(プラットフォーム)に載せることで、外部のネットワーク効果を生み出し、企業の枠を超えた、新しい事業のエコシステム(生態系)を作り出す」経営戦略のこととされている。しかし、同じ言葉でも業界や業種によって、少しずつニュアンスは異なるようだ。

 プラットフォームを日本語に訳すと、「舞台」や「基盤」という意味になるが、IT系のプラットフォームはどちらかといえば前者の「舞台」に近く、最終製品やサービスを提供するのではなく、他者がそれを利用してものづくりを行えるような価値の高い仕組みを顧客に提供することだ。一方、製造業のプラットフォームは後者の「基盤」に近い。プラットフォームを基盤として、そこから派生した商品を発展させていくのが製造業のプラットフォームの基本的な考え方のようだ。

 IT系でいえば、日本国内でも圧倒的なシェアを誇るMicrosoft 社のOS、WindowsやAppleなどが、IT系プラットフォームビジネスの最たるものではないだろうか。WindowsやAppleはOSという舞台を提供することで、アプリ開発者たちがその上で商品を展開するのだ。また、楽天<4755>のショッピングモールやYahooのオークションなども、楽天やYahooが何かを売っているわけではなく、その仕組みを提供しているだけだ。それをユーザーが利用して、商品やサービスの提供を行っている。

 しかし、自動車業界などで盛んになりつつある製造業系のプラットフォーム戦略は、少しニュアンスが異なる。ど日系企業では、トヨタ<7203>が「Toyota New Global Architecture(TNGA)」、日産<7201>が「CMF(Common Module Family)」といったプラットフォーム戦略を発表している。これらの戦略では、基盤となるプラットフォームを作り、そこから派生した車種の間で部品の共用化率を高めて部品の種類を減らし、コストの削減や工程の簡略化、納期の短縮などを実現している。

 また、二輪の売上規模で世界トップクラス、船外機やウォータービークルの販売台数で世界首位を誇るヤマハ発動機<7272>も、プラットフォーム化を積極的にすすめている企業だ。同社は、2015年末に発表した新中期経営計画の中で、2018年までの3か年で合計270機種のニューモデルの投入計画を発表しているが、これは前々中期にあたる2010‐2012年の実績の124機種の2倍以上。この無謀ともいえる経営計画を実現させるものこそ、より高度なプラットフォームなのだ。もちろん、同社ではこれまでにも、車体やエンジンを共有してバリエーションモデルを広げるプラットフォームに取り組んできた。しかし、同社ではさらに進んで、スノーモビル、ROV(レクリエーショナル・オフハイウェイ・ビークル)、水上オートバイそれぞれのエンジン技術者が、車種どころか、事業の枠を越えて共同で開発を行った高性能3気筒エンジンを開発し、これを搭載した水上オートバイ、「MJ-VX Cruiser」を3月に開催された「ジャパンインターナショナルボートショー2016」に出展している。プラットフォームエンジン自体はもとより、その開発プロジェクトもプラットフォームとなっているのが面白い。

 同じプラットフォーム戦略でも、IT系と製造業系では異なる部分が多いものの、一つの舞台の上で共同し、新しい価値を生み出すということでは大いに共通しているのではないだろうか。世界の先進各国でもプラットフォーム戦略が積極的に行われている中、日本企業は他国に比べて導入が少し立ち遅れているとも言われている。今後のグローバルな展開と飛躍のためにも、プラットフォーム戦略の更なる普及と発展に期待したいものだ。(編集担当:藤原伊織)