Apple WWDC2016でもデータプライバシー重視の方針

2016年06月21日 08:28

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ユーザーデータを収集しないことを強調してきたAppleだが、6月13日に開幕した同社の開発者向けカンファレンスWWDC 2016でもデータプライバシー重視の方針を示した。

 ユーザーデータを収集しないことを強調してきたAppleだが、6月13日に開幕した同社の開発者向けカンファレンスWWDC 2016でもデータプライバシー重視の方針を示した。同カンファレンスの基調講演にて、ソフトウェアエンジニアリング担当シニアバイスプレジデントのCraig Federighi氏は「提供するすべての機能において、ユーザーのプライバシーをいかにして保護するかを慎重に検討している」と発言している。
 
 Appleの顧客のプライバシー保護に対する姿勢は2015年12月に起きたサンバーナーディーノ銃乱射事件で、犯人が所持していたiPhoneのロック解除を求められた際にこれを拒否し、FBIと裁判で戦ってきたことからも明らかだろう。従来からiPhoneやMacで実行されるアプリにおいて、製品上やインターネット上、Appleのサーバ上のユーザーデータには特殊な暗号化が施されていたが、この頃より同社はユーザーデータを保護するため暗号化技術をさらに強化する方向に舵を切っている。

 ユーザーデータの活用してパーソナルアシスタントなどのサービス向上に役立てる流れが加速しているなかで、Appleの戦略はこれに逆行しているようにも見える。人工知能の開発競争の勝敗が今後のIT企業の地位を決定づけることは間違いなく、GoogleやFacebook、AmazonやMicrosoftなどのライバル企業は、こぞってこの分野に最大限のリソースを投資している。Appleも例外ではなく、従来品質とセキュリティを重視しクローズドなプラットフォームで開発されてきた同社の音声アシスタント機能「Siri」を外部開発者開放することで、開発を加速し移植性を高めるような方針転換を図っている。

 ユーザーデータの活用方法については、Appleは個人に関連付けられる情報を蓄積しないような方法でデータを活用する計画があるようだ。機械学習にはクラウド上の膨大なユーザーデータの活用が必須だが、「Differential Privacy」と呼ばれる技術がユーザーデータのプライバシーを維持しつつ、データのクラウドソーシングとの照合を可能にする。この技術を活用することでiPhoneでの顔認識はクラウドではなくローカル端末上で処理がなされるようになる。

 クラウドや機械学習の分野では後れを取るAppleが、プライバシーやセキュリティを重視する我々のニーズを捉えてそこに注力する戦略をとったのだろう。数年後には人工知能が完全に我々の生活と切っても切り離せない存在になることが予想されるが、そのときにプライバシーを守りつつ最適にアシストしてくれるデータ活用方法が確立されていることが期待される。(編集担当:久保田雄城)