年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)において、現在の規定では日本株への投資配分は12%となっている。この配分を20%超へと大幅に引き上げることが伝わり、さまざまな議論を呼んでいる。与党内にも「(株式運用を増やすことが)単なる株価維持策であってはならない」との指摘がある。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)において、現在の規定では日本株への投資配分は12%となっている。この配分を20%超へと大幅に引き上げることが伝わり、さまざまな議論を呼んでいる。与党内にも「(株式運用を増やすことが)単なる株価維持策であってはならない」との指摘がある。より積極的な運用を行うことで、収益チャンスは増えるが、当然リスクは高くなる。一方で、株式や債券への依存度を下げ、投資先を分散し長期的に安定した運用益を得るために、有力企業の企業年金の投資先が太陽光発電事業や不動産などに広がっている。
企業が掛け金を拠出し、従業員に将来の支給金額を約束する企業年金は企業が運用して資産を増やす必要がある。バブル崩壊後の株価の低迷や低金利の長期化を背景に上場株や債券の割合を減らし、それ以外の「代替投資」と呼ばれる資産の比率を高める年金が増えている。年金のニーズに応えようと、大手商社は新しい運用商品を相次いで作っている。
京セラ<6971>の企業年金は2013年度から太陽光発電ファンドへの投資を本格的に始め、投資残高は今年3月末で27億円と資産全体の1.5%を占める。ファンドは発電所が作った電力を売却した収益を投資家に分配する。再生エネルギーのニーズが広がり、京セラは「安定した利回りが見込める」と判断した。太陽光投資の運用利回りは一般的には5~6%前後といわれる。
日立国際電気<6756>は年金資産のうち2%程度を「大災害(CAT)ボンド」と呼ばれる保険関連に投資した。主に保険会社が発行する商品で期限までに台風や地震などの大災害が起こらなければ投資家は元本や利息を得られる。不動産市場で運用する企業年金も多く、オムロン<6645>は不動産ファンドへの投資を増やした。
JPモルガン・アセット・マネジメントによると、3月末の日本の企業年金の資産全体のうち代替投資が占める比率は初めて10%を超えた。代替投資も換金性が低かったり、運用が裏目に出たりするなどリスクもある。それでも多様な資産を組み合わせれば資産全体の運用成績の安定につながると期待しているようだ。
最近の株価上昇で企業年金の運用成績は上向いている。しかし、上昇し続ける相場は無い。公的年金が日本株や外国債券の運用比率を高めるなかで、「3階建て」部分と言われる企業年金はどうあるべきなのか問われる。(編集担当:久保田雄城)