2016年7月17日、MotoGP第9戦ドイツGPの決勝が行われた。舞台となるザクセンリンクは全長3,671mの低速サーキット。1998年にグランプリが初開催されて以来改修を重ねており、現在はアップダウンに富み、タイトなコーナーが連続するパッシングポイントの多いレイアウトとなっている。
迎えた決勝当日は雨模様。前戦オランダGPに次いで雨となった今回のドイツGPだが、MotoGPに先立って行われたMoto3、Moto2クラスの決勝で転倒者が相次いでいたこともあり、天候がレースの展開に大きく影響することが予想された。
気温21℃、路面温度24℃のウェットコンディションで始まった決勝、好スタートを切ってホールショットを決めたのはポールポジションからスタートしたマルク・マルケス(レプソルホンダ)だった。だが、スタート直後は順位が激しく入れ替わる混戦模様となり、1周目を終えた時点でトップに立ったのはバレンティーノ・ロッシ(モビスターヤマハMotoGP)。2番手にはアンドレア・ドビツィオーゾ(ドゥカティ)、3番手にM・マルケス、4番手にダニロ・ペトルッチ(オクトプラマックヤクニック)、5番手にエクトル・バルベラ(アビンティアレーシング)が続いた。
ウェットレースを得意とするライダーたちが上位に進出する中、3周目にはA・ドビツィオーゾがV・ロッシを抜いてトップに立った。さらに雨のレースを得意とするD・ペトルッチはV・ロッシと2番手争いを演じ、前戦オランダGPで優勝したジャック・ミラー(エストレージャ・ガルシア・0,0・マークVDS)も4番手に浮上するなど、普段とは違った雨ならではの攻防戦が随所で見られる展開となった。
だが11周目、2番手争いをしていたD・ペトルッチが転倒。マシンに大きなダメージを負ってしまった。さらに、M・マルケスもコースを大きく外れて順位を落とした。
ウェットコンディションで迎えた決勝だが雨は上がっており、レース中盤になるとわずかながら青空が見え始め、路面も乾き始めた。刻々と変化する路面状況に、マシンの乗り換えのタイミングがレースの行方を大きく左右することが予測された。
14周目にアンドレア・イアンノーネ(ドゥカティ)がピットインし、インターミディエイトを履いたマシンに乗り換え、18周目にはM・マルケスがスリックタイヤのマシンに乗り換えた。以後、続々とライダーがピットインしマシンを乗り換えたが、先頭集団のA・ドビツィオーゾ、V・ロッシ等は残り8周(23周目)までウェットタイヤのまま引っ張った。
先頭集団がマシン乗り換えのためピットインした際にはコースは既にかなり乾いており、早めにマシンを乗り換えたM・マルケスは好タイムを叩き出し、先頭集団のピットインのタイミングで一気にトップに躍り出た。
また、上位陣のピットインによってスコット・レディング(オクトプラマックヤクニック)も2番手に浮上。さらに、雨のレースを好むカル・クラッチロー(LCRホンダ)もレース終盤にかけて猛烈な追い上げを見せ、29周目に3番手走行中のA・ドビツィオーゾをパス、ファイナルラップには2番手のS・レディングを交わして、2番手まで浮上した。
ウェットコンディションでペースが上がらず、コースアウトによって一時先頭集団から姿を消したM・マルケスだったが、早めにマシンを乗り換える戦略が見事にはまり、最終的には独走状態でフィニッシュ。今季3勝目、ザクセンリンクでは7年連続のポール・トゥ・ウィンという快挙を成し遂げた。
2位のC・クラッチローは今季初の表彰台を獲得。3位はA・ドビツィオーゾ、4位はS・レディング、5位はA・イアンノーネ。一時トップに立ったV・ロッシはマシンの乗り換えのタイミングが遅れた影響が大きく8位フィニッシュだった。
また、チャンピオンシップで2位につけていたホルヘ・ロレンソ(モビスターヤマハ)は今回のドイツGPでは見せ所なく、15位に終わっている。
今回のドイツGPで優勝したM・マルケスは25ポイントを加算し総合170ポイント。ポイントランキング2位のJ・ロレンソ(122ポイント)、3位のV・ロッシ(111ポイント)に対し大きなアドバンテージを築き、前半戦を終えた。
チャンピオンシップ争いではM・マルケスが完全に抜け出す形となった今季のMotoGPだが、シーズンはまだ半ば。後半戦のヤマハ勢の追い上げ、あるいはドゥカティをはじめとする他チームの台頭も十分にあり得る。
次戦のオーストリアGP決勝は8月14日。約1カ月のサマーブレイク明けのレースは後半戦の行方を大きく占うことになるだろう。(編集担当:熊谷けい)