IT専門調査会社IDC Japanの予測によれば、国内クライアント仮想化ソリューション市場は、2020年には6,611億円まで拡大。15~20年の年間平均成長率は8.0%とのこと。20年の法人向けクライアント市場におけるクライアント仮想化導入率は42.3%まで拡大すると予測している。
これまでも何度かブームが到来したクライアント仮想化だが、IDCによれば今回の潮流は16年から始まった「クライアント仮想化第4世代」とのこと。クライアント仮想化第4世代ではワークスペースに関するサービスが顕在化し、そのなかにデスクトップ、モバイル、Web、認証、コンテナなどを取り込み共存させる。さらには業務・産業用デバイスや工場の生産ライン、金融システムなどでクライアント仮想化が進み運用管理の効率化や生産性の向上、セキュリティの強化に仮想化が活用される。将来的には自動車やロボット、IoTデバイスにもクライアント仮想化が導入されるようになる。
市場拡大の背景には、クライアント仮想化ソフトウェア技術の進歩やネットワークインフラ基盤の拡大といった技術的要素がまずある。ネットワークの高速化とハードウェア・ソフトウェアの性能向上なくしては、快適で安全なワークスペースの仮想化は実現できない。ワークスタイルの多様化からの需要も要因の一つとなっている。モバイルワークやリモートワーク、サテライトオフィスや在宅勤務など多様な勤務形態に対応するワークスペースが必要となった。それにともなって顕在化するのがセキュリティ面からのクライアント仮想化への需要だ。これはワークスペースのみならず、システムに対しても求められるもので、マイナンバー制度の導入により自治体や金融を中心にしたクライアント仮想化の採用が進んでいる。同様の理由や管理、業務効率化の観点から病院、工場、店舗、教育機関など多様な業態でのクライアント仮想化への要望が高まっている。
市場規模が順調に拡大していけば、クライアント仮想化は各業態で浸透すると考えるが、そこでの課題は、高度に仮想化されたシステムを運用・設計する技術者の不足だ。エンドユーザーと切り離されたシステムを滞りなく運用するには、仲介役の人材も必要となるため、これらの人材を配置できて、クライアント仮想化のプライオリティが高い業態から順にシステムの更新が進むと考えられる。(編集担当:久保田雄城)