7月27日、富士フイルムHD<4901>が2016年4~6月期(第1四半期)決算を発表した。
売上高は7.4%減、営業利益は23.8%減、税引前四半期純利益は51.3%減、最終四半期純利益は54.1%減という減収、2ケタ減益。最終利益の2017年3月期の通期業績見通しに対する進捗率は8.9%しかなかった。
減収、営業減益の最大の要因は為替の円高で、それが売上高を383億円押し下げた。セグメント別では、「チェキ」が快走を続けるイメージング・ソリューション部門は売上高9.7%減、営業利益17.5%増。フラットパネルディスプレイ材料事業、電子材料事業が売上を伸ばし、「アスタリフト」シリーズの化粧品も国内市場で堅調が続くインフォメーション・ソリューション部門は売上高4.7%減、営業利益0.7%増。円高のためアメリカ向けの複写機の輸出が打撃を受けたドキュメント・ソリューション部門は売上高8.8%減、営業利益39.2%減と悪かった。
最終利益も円高による外貨建て資産の為替差損に圧迫された。前年同期、投資有価証券の売却益を計上して最終利益が押し上げられた反動もあらわれた。
2017年3月期の通期業績見通しは売上高2.3%増、営業利益15.1%増、税引前当期純利益13.1%増、最終当期純利益1.4%増の増収増益で修正なし。4~6月期は減益幅が大きくても「計画通り」といい、想定為替レートも1ドル110円、1ユーロ125円のまま据え置いている。
富士フイルムHDは2014年11 月に策定した中期経営計画「VISION2016」(2015年3 月期~2017年3 月期)で、「ヘルスケア」「高機能材料」「ドキュメント」の3 事業分野を成長ドライバーと位置づけている。とりわけ経営の軸を「写真フィルム」から「ヘルスケア」へ転換するプロセスは今、最終局面を迎えようとしている。
7月25日には動物の検体検査サービスでは国内大手のモノリス(東京都調布市)を買収すると発表した。8月1日に完全子会社化し「富士フイルムモノリス」と改称する。動物病院やペットクリニックが提供する「動物医療」は成長分野の一つで、ペットも長寿化で生活習慣病の罹患率が上がり、健康診断需要が伸びている。それをつかんで動物医療周辺事業への拡大を図っていく考え。
8月に武田薬品工業が入札・売却を行う和光純薬工業(大阪市)の買収にも名乗りをあげている。同社は創薬研究用試薬で国内トップシェアを有し、買収額は最大1000億円規模とみられている。この大型買収に成功すれば、成長分野の創薬の周辺事業でも大きな足がかりを得ることになる。(編集担当:寺尾淳)