全国書店1,128社の最新決算の売上高トップは紀伊國屋書店で1,086億3,200万円

2016年07月21日 08:32

 東京商工リサーチは、書店を運営する全国1,128社を対象に業績の動向調査を行った。最新決算の売上高トップは紀伊國屋書店(東京都目黒区)の1,086億3,200万円で、業界で唯一1,000億円を上回った。ただ、売上高1億円未満の企業が5割を超えたほか、個人企業が198社(構成比17.5%)を占めるなど、小・零細店舗が圧倒的多数を占める業界構造となっている。業歴別で業歴10年未満の新興企業は40社(同3.5%)と新規参入が極端に少なく、かつ後継者難などから廃業が続く業界の深刻な側面が浮かび上がったとしている。

 1,128社の売上高合計は、最新期で1兆47億2,700万円(前期比0.6%減)で、前期から63億2,600万円減少した。前々期から前期は230億2,300万円(同2.2%減)減少、減少幅は縮小したとはいえ減収傾向が続いている。

 最新期の「増収」は255社(構成比22.6%)と2割にとどまり、467社(同41.4%)が「減収」、「横ばい」が406社(同35.9%)だった。前期に比べ増収企業が46社増加し、減収企業は106社減少したが、増収企業の伸び幅より減収企業の落ち込みが大きかったことから全体の売上高は前年度を割り込んだ。約8割が「減収」か「横ばい」と、売上が伸び悩む構図が続いているとしている。

 最新期(判明454社)の損益が「黒字」は355社(構成比78.1%)に対し、「赤字」は99社(同21.8%)だった。黒字企業の構成比は前期(同74.4%)より3.7ポイントアップしたが、大手企業が店舗撤退損などで大幅損失を計上するケースが目立ち、赤字幅が広がった。また、人手不足による人件費の高騰なども利益の圧迫要因となっている。

 書店1,128社の最新期決算のうち、売上高1億円未満は643社(構成比57.0%)で、約6割を占めた。1~数店舗の家族中心に運営する小・零細規模の企業が圧倒的に多いことがわかるとしている。

 次いで、1~5億円未満(318社、同28.1%)が約3割、5~10億円未満(63社、同5.5%)、10~50億円未満(63社、同5.5%)と続き、売上高5億円未満が961社(構成比85.1%)と全体の8割以上を占めた。

 一方、全国規模で事業展開する売上高100億円以上の大手は17社(同1.5%)にとどまった。小・零細規模が大多数を占める業界構造が特徴といえる。

 売上高ランキングのトップは紀伊國屋書店で、売上高1,086億3,200万円だった。1927年創業の業界最大手で国内外に約100店舗を展開している。2位の丸善ジュンク堂書店(売上高759億700万円)は2015年1月、老舗の丸善書店にジュンク堂書店が経営統合するかたちで発足、このため売上高が前期から大幅に伸長した。3位は流通大手、イオングループの未来屋書店(同548億4,600万円)で、主にグループのショッピングセンターにテナントとして店舗展開している。4位は首都圏地盤の有隣堂(売上高524億1,500万円)で、書籍部門以外のOA機器販売の大口受注が売上アップに寄与した。5位は中国地方を地盤とするフタバ図書(同348億2,100万円)が続く。

 最新期の売上高ランキング上位10社のうち、上位5社は売上を伸ばし下位5社は減収と対照的な結果となった。スケールメリットの追求やグループ企業の集客力、書籍部門以外への多角化など特色のある経営を打ち出す企業の伸長が目立った。反面、多店舗展開している大手でも、市場縮小のあおりを受け減収が続いている企業も多いとしている。(編集担当:慶尾六郎)