かつては大小関係なく多くの企業で実施されていた運動会や慰安旅行などのレクリエーション。こうした行事は、従業員だけでなく従業員の家族も巻き込んだものが多く、単なる従業員に対する福利厚生に留まらないものであった。しかし現在は、経済状況の悪化や人々の意識の変化により徐々に減少しており、それに代わって「家族見学会」が広がりつつあるようである。
山田養蜂場では毎年、「従業員の家族へ、会社の想い・環境・仕事内容や同じ部署の上司、同僚などを知ってもらうことで会社に対して深い理解と安心をしてもらう」という目的のもと、家族見学会を開催。さらに今年は、山田養蜂場の掲げる「人間主義」や「社員を家族のように」といった想いが、社員の家族の方にも感じられる場にしようと、「家族間での交流を深める」という目的を加えて実施されたという。同社の見学会の特徴は、本社やグループ会社の従業員とその家族だけでなく、2013年度新卒内定者もその参加対象である点であろう。
セコムグループのセコムIS研究所では、研究所という秘匿すべきものが多く存在する業務の性質上、リクルート活動などで見学会を開く以外は職場をオープンにはしておらず、所員の家族が見学する機会はなかった。しかし2009年の夏、研究所員の家族に仕事の理解を深めてもらおうという狙いのもと、家族見学会を実施。夏休み中ということから子どもの参加者が見て触れて楽しめる見学会にしようと、デモを中心とした展示を行い、参加総数は30家族60人にのぼったという。
その他、国際紙パルプ商事では、実際に父母の働いている姿を見学出来るよう、平日の就業時間中に家族の会社見学会を開催。「お客様に感動を与える工場作り」を目指している片山食品では、「まずは身近な家族に感動を!」というテーマで工場見学を実施するなど、自分の働く姿を家族に見て知ってもらうもの、仕事に対する家族の理解を深めるためのものなど、様々な企画を凝らした家族見学会が開催されている。
昨年の震災を機に「絆」という言葉にスポットライトがあたるなど、「家族見学会」のような交流を深めるイベントが広がりやすい状況にある。企業側としても、対内的には従業員を啓蒙し、対外的には自社の取り組みを広報する絶好のアピールの場となる。一方で、終身雇用や年功序列といったかつての日本では当然であったシステムが崩れつつあり、仕事とプライベートを明確に区別する意識が高まりつつあることは否めないであろう。賛否両論とも言えるこうしたイベントが定着し、今後も広がっていくためには、真に魅力ある企業が増えていく必要があるのではないだろうか。(編集担当:井畑学)