伝統工芸の漆器がもつ独特の美しい漆黒を実現したバイオプラスチックとは

2016年08月19日 08:23

 現在、プラスチックは、温暖化防止や石油資源枯渇対策のため、植物を原料にしたバイオプラスチックの量産化が進んでいるという。さらに、将来の食糧不足への懸念から、非食用の植物資源を使った新しいバイオプラスチックのニーズが高まっている。わらや木材など非食用植物の主成分を原料に使ったセルロース樹脂は、文具、玩具、生活用品など一部に利用されているが、その利用拡大には、環境調和性以外にも、装飾性などの新たな付加価値となる機能の創出が求められているという。

 これを受け、NEC<6701>ではカシューナッツの殻など非食用植物成分を使ったセルロース系プラスチックの研究を行っているが、環境調和性や耐久性(耐熱性や耐水性など)といった機能性に加え、この度、高度な装飾性の実現にも取り組んだ。京都工芸繊維大学、日本を代表する漆芸家の下出祐太郎氏と共同で、草や木など非食用植物を原料とした樹脂(セルロース樹脂を使い、国際的に高い評価を得ている伝統工芸の漆器がもつ独特の美しい漆黒(漆ブラック)を実現したバイオプラスチックを開発したという。

 漆ブラック・バイオプラスチックの特長は、非食用部分である草・わら・木材などの主成分であり、石油代替が可能なほど豊富に生産されているセルロースを原料にしたセルロース樹脂を使用した。また、このセルロース樹脂に対して、着色性や光の反射性を調整する特有な添加成分として、黒色系着色成分や高屈折率の有機成分を混合し、これらを微粒子状に細かく分散させることで、高級な漆器が示す高度な光学特性(低い明度、鏡面レベルの高い光沢度など)を初めて達成。日本を代表する漆芸家の下出祐太郎氏が制作した最高レベルの漆器モデルと同等の深みや温かみ、艶のある漆特有の漆黒(漆ブラック)を実現した。

 さらに、従来の漆器では、基材の表面に漆を塗布し磨いて仕上げていたのに対して、このバイオプラスチックは、通常のプラスチックのように加熱して溶融させ、金型(鏡面加工)の中に押し流して成形(射出成形)できる。これにより、様々な形状の製品の量産が可能だとしている。

 NECは、今後、高級自動車の内装部材、装飾性を要する高級建材・電子機器などの耐久製品用途での利用を目指し、パートナー連携を進めていくとしている。(編集担当:慶尾六郎)