日本医療研究開発機構(AMED)の公募研究事業「パーソナル・ヘルス・レコード(PHR)利活用研究事業」として、前橋工科大学、松本浩樹准教授の研究グループによる研究計画が採択され、7月より始動している。
日本医療研究開発機構(AMED)の公募研究事業「パーソナル・ヘルス・レコード(PHR)利活用研究事業」として、前橋工科大学・松本浩樹准教授の研究グループによる研究計画が採択され、7月より始動している。採択課題名を「妊娠・出産・子育て支援PHRモデルに関する研究」としており「血圧や体組成などの生体情報を認識しデータを蓄積するシステム・電子母子手帳システム・電子お薬手帳システム」をマイナンバーと紐づけた形での健康管理システム構築を目指す。さらにはこれらのシステム活用のために、救急隊員がマイナンバーを読み取って患者の情報を現場で確認できるシステムについて研究を進めるとのこと。
同事業が進められる前橋市は、2013年度よりICTを活用した街づくり「ICTしるくプロジェクト」を進めており、その一環として1月には、マイナンバーカードの活用で母子手帳の記録が閲覧できる「母子健康情報サービス」を全国で初めて導入している。今回も同プロジェクトの一環で全国に先駆けた研究となっている。
マイナンバーに関してはエンタープライズ分野で、4月には富士通が「FUJITSU Enterprise Application アドオンマイナンバーシステム」を、6月にはNECが「マイナンバー収集代行サービス」「マイナンバー監査支援サービス」を含む4つのサービスを開始するなど、人事システムへの積極的な導入が進められている。今回のPHR事業のような医療・行政・ライフサービスに関するものでは現在の段階で実用化の例がほとんど見られない。
理由のひとつとして、マイナンバーカードの普及が滞っていることがあげられる。6月2日に開催した「公的個人認証サービス等を活用したICT利活用ワーキンググループ」で、政府はマイナンバーカードの申請数がピーク時の10分の1に落ち込んでいることを明らかにした。カード管理システムの障害やアクセス集中による遅延といったトラブルが相次ぎ、自治体が1日の交付枚数を抑えた運用を行っているほか、申請者側にもブレーキがかかっていることは明らかで、カードの利便性が見えてこない現状に申請意欲が失せていると考えられる。
マイナンバーでの個人情報の一元管理により、国や自治体のコスト削減になるのは当然として、利用者自身の行政手続きや健康管理といった面で確実に利便性が高まり、実用化のメリットは大きい。ネガティブな側面が取り上げられることが多いマイナンバー制度だが、前橋市などの活用事例がモデルとなり、国民にカードの利便性が認知されるならば普及が早まるのではないか。(編集担当:久保田雄城)