【今週の展望】週末の「避暑地の出来事」に期待するだけの週

2016年08月21日 20:37

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ワイオミング州ジャクソンホール。世界のマーケット関係者の間でだけ、異常なほど知られている山岳リゾート地。そこで円高は治るのか? 悪化するのか?

 8月12日時点の需給データは、信用買い残は8月5日時点から802億円減の2兆1616億円で、2週ぶりの減少。信用倍率(貸借倍率)は3.70倍から3.29倍へ4週ぶりに低下した。信用評価損益率は-15.59から-14.34へ1.25ポイント改善し、3週ぶりの改善だった。裁定買い残は1718億円減の4734 億円で2週続けて減少し、2009年3月以来7年5ヵ月ぶりの低水準になった。8月8~12日の週は合計755億円だった日銀のETF買いが効いている。

 東証が発表した8月8~12日の投資主体別株式売買動向によると、外国人は2週ぶりの買い越しで買越額は484億円、個人は2週ぶりの売り越しで売越額は2113億円、信託銀行は4週連続の買い越しで買越額は1204億円。「需給三国志」は外国人、信託銀行の買いを個人の売りが425億円も上回った。

 前週のカラ売り比率は、40%台が1日だけだった前々週とはうって変わって再び連日40%台に。15日は41.8%、16日は43.1%、17日は40.9%、18日は44.3%、19日は43.8%だった。18、19日は異常な高さで、ザラ場中に上値が抑えられてカラ売りの買い戻しが起きず、ほとんど解消しなかった。

 日経平均VI(ボラティリティー・インデックス)は、12日終値は19.01で恐怖指数は今年最低水準まで下がっていたが、前週は16日に20を超え、18日には22.22まで上昇。19日終値は22.02だった。とはいえ、コンスタントに28をオーバーし30台にもたびたびタッチした7月と比べれば8月はずっと低位にある。それも日銀のETF買い効果だろうか。

 19日のNYダウは45ドル安。為替のドル円は100円台前半、ユーロ円は113円台半ば。CME先物清算値は16475円、大阪先物夜間取引終値は16510円だった。状況は、あまり変わってない。

 今週は、テクニカル指標がトレンド系もオシレーター系も「ニュートラル」で揃っている上に、国内も海外も経済指標、イベント、決算発表が少なく、ひとえに「ジャクソンホール待ち」する週。為替も株価も変動要因が乏しい。

 為替のドル円レートは100円台を中心に、ときどき100円を割ったり101円台に乗せたりするような状況が週末まで続く可能性が高そうだ。為替に大きな影響を及ぼす出来事といえばジャクソンホールのイエレンFRB議長の講演だが、それは日本時間で27日未明で、すでに今週の東京市場の取引は終わっている。為替が前週の状況をそのまま持ち越すなら、40%を大きく超えている東京市場のカラ売り比率もなかなか下がらない。

 一方、日銀のETF買いの年間3.3兆円から6兆円への「威力倍増」を背景に8月は日経平均VI(恐怖指数)が低下し、前週はドル円レートが99円になっても日経平均は16400円を割り込むことなく、底堅くなっている。「午後、ETF買いが入るか? 入らないか?」を探りあって駆け引きする心理戦も見られたが、終わってみれば「コップの中の嵐」で、終値ベースではそれほど大きな変動を引き起こしていない。

 だから今週は「動かない週」。変動は25日線を軸にボリンジャーバンドの「-1σ~+2σ」程度にとどまると思われる。19日終値に当てはめると16376~16773円。多少のはみ出しを加えて上値と下値のメドは16350~16800円でいいだろうか。日経平均の17000円チャレンジがあるとすれば、イエレン議長の発言を受けて26日の海外の為替市場が動いた後、週末をはさんだ来週29日になるだろう。その時には日足一目均衡表の「雲」もすでにねじれていて「変化日」のシグナルを出している。

 ということで、今週の日経平均終値の予想変動レンジは16350~16800円とみる。

 人間のからだが暑さに慣れるように、株式市場もだんだん円高に慣れていく。前週はドル円が何度も100円を割ったが、そのたびに日経平均は16400円台で持ちこたえた。「ブレグジット・ショック」の6月24日に100円割れを起こした時は15864円まで下落し、東証1部全銘柄が一時マイナスになる異常事態に陥ったが、それより500円以上も高い水準である。投資家に限らず人間の心理は、悪化した状況に対してうまく折り合いをつけられる柔軟性があるということだが、ある意味それは、怖いことでもある。「ゴルディロックス」などと言っていたら、後で「3匹のクマ」がやってくる。(編集担当:寺尾淳)