約2億5200万年前に史上最大の生物の大量絶滅があったという。東北大学大学院理学研究科地学専攻の海保邦夫教授のグループは、その生物の史上最大の大量絶滅時に地球規模の土壌流出が起きて、浅海の無酸素事件を引き起し、生物の大変革を起こしたことを、堆積岩中の有機分子分析により解明した。
2億5200万年前のペルム紀末に史上最大の大量絶滅が起きて、95%の種がいなくなり地球の真核生物相が一変した。陸では、ペルム紀の爬虫類とほ乳類型爬虫類がこの時に絶滅し、次の時代の三畳紀に恐竜とほ乳類が出現した。海では、古生代型動物群が絶滅し、現代型動物群が出現した。その原因はシベリアの巨大火山活動で、それによる極端温暖化と海洋深部の無酸素化が、原因と考えられてきた。大量絶滅は2段階で起きていて1段階目はより顕著である。海保邦夫教授らの研究グループは、絶滅の1段階目において、地球規模の顕著な土壌流出、浅海の生物生産量増大と酸素欠乏の証拠を、多数の地点で捉えた。
しかし、2段階目の絶滅時には、土壌流出事件は起きず、海洋深部の無酸素化は最大になった。このことは、シベリアの巨大火山活動による成層圏エアロゾルが気候変動を起し、それにより陸上植生が崩壊し、土壌流出?浅海無酸素化が起きたことを示す。シベリアの巨大火山活動から放出されたCO2などの温室効果ガスは、地球温暖化を促進し、緯度による海水温差が小さくなり、海洋循環が停滞的になり、海洋無酸素還元化が促進、2段階目の絶滅が起きた。今迄は、1段階目も2段階目も地球温暖化と海洋深部の無酸素化と海洋酸性化が原因と考えられてきたが、原因の違いを初めて明らかにした。それは、巨大火山噴火に始まる一連の地球環境変動と考えられるとしている。
また、東北大学大学院理学研究科地学専攻の海保邦夫教授、気象庁気象研究所の大島長主任研究官らのグループは、約6600万年前に小惑星の地球への衝突により地下にあった有機物が燃え、衝突エネルギーで成層圏に放出されたすすが、地球規模の気候変動を引き起し、恐竜やアンモナイト等の絶滅を起こしたことを、有機分子分析と気候モデル計算により解明した。大量絶滅時の地球規模の気候変動を詳細に解明したのは世界で初めてのことで、小惑星の地球への衝突から恐竜やアンモナイトの絶滅にいたるプロセスが見えて来たと言えるとしている。
この約6600万年前の白亜紀末の大量絶滅の原因は小惑星の地球への衝突だが、ペルム紀末の大量絶滅の原因は巨大火山活動である。しかし、それによる地球環境変動は良く似ている。その第一段階は、成層圏に放出されたエアロゾルが太陽光を遮断することによる、地球規模の気温低下と干ばつ。第二段階は、その後に始まる放出されたCO2による地球規模の温暖化である。白亜紀末の大量絶滅の直接の原因は第2段階目だが、ペルム紀末の大量絶滅の直接の原因は、今迄の説によると第2段階目。今回の論文は、第1段階目もペルム紀末の大量絶滅の直接の原因であったことを示唆しているという。ペルム紀末の大量絶滅は恐竜とほ乳類の出現を起し、白亜紀末の大量絶滅は恐竜の絶滅を起こしたとしている。(編集担当:慶尾六郎)