日本弁護士連合会の中本和洋会長は31日、政府が2020年のオリンピックの安全対策強化など、テロ抑制を理由に「テロ等組織犯罪準備罪」の法案を国会に提出し、成立を図ろうとしていることに対し「処罰範囲が十分に限定されたものになっていない」と指摘したうえで、国会への提出に反対すると表明した。
共謀罪の創設を含んだ法案は2003年から2005年にかけ3回に渡り国会に提出され、日本弁護士連合会はじめ人権団体、野党の強い反対などで廃案になってきた経緯がある。
中本会長は「政府の提出予定新法案は国連越境組織犯罪防止条約締結のための国内法整備として立案されたものだが『組織犯罪集団に係る実行準備行為を伴う犯罪遂行の計画罪』を新設し、その略称を『テロ等組織犯罪準備罪』とした。2003年の政府原案では適用対象を単に『団体』としていたものを『組織的犯罪集団』とし、その定義について『目的が4年以上の懲役・禁錮の罪を実行することにある団体』とした。さらに、犯罪の『遂行を2人以上で計画した者』を処罰することとし、計画した誰かが『犯罪の実行のための資金又は物品の取得その他の準備行為が行われたとき』という要件を付した」と、対象を従前のものより狭めたことには一定評価した。
ただ、「計画は『犯罪の合意』にほかならず、共謀を処罰するという法案の法的性質は何ら変わっていない」と指摘。また「条約はそもそも越境組織犯罪を抑止することを目的としたもので、共謀罪の対象犯罪を限定するためにも、越境性の要件を除外したものは認められるべきではない」とした。
中本会長は「組織的犯罪集団を明確に定義することは困難で、準備行為についても、例えばATМからの預金引き出しなど、予備罪・準備罪における予備・準備行為より前の段階の危険性の乏しい行為を幅広く含み得るもので、適用範囲が十分に限定されたと見ることはできない」と問題点を指摘している。(編集担当:森高龍二)