近年、子供の理科離れや、国民全体の科学技術知識の低下が問題となっている。
内閣府大臣官房政府広報室が行った世論調査によると、科学技術についての話題に関心があるかという質問に対し、「関心がある」と答えたのは63.0%(「関心がある」24.7%+「ある程度関心がある」38.3%)で、「関心がない」と答えたのは35.6%(「あまり関心がない」23.9%+「関心がない」11.8%)となった。一見すると国民の科学に対する関心が高いようにも見受けられるが、年齢別に見ると、「関心がある」割合は50歳代で多く、「関心がない」割合は20歳代で高くなっていることから、若者の科学に対する興味の低下が心配されている。
理科離れは日本のみならず、先進国に共通する社会問題だ。各国とも理科離れに歯止めをかけ、科学技術人材の養成と確保のための取り組みに本腰を入れ始めている。
その背景には、少子高齢化の問題もある。今現在は大きな問題でなくても、このまま少子高齢化が進めば、研究者や科学者などの科学技術人材を質・量ともに確保していくことが難しくなってしまうだろう。科学技術の衰退は、ものづくりやイノベーションの基板が危うくなるのはもちろんのこと、国際競争力の低下にもつながる由々しき問題だ。
一方、日本には「理科離れなど存在しない」という見方もある。文部科学省の「科学技術白書」によると、近年、理科系の大学や学部の入学者数は17~18万人前後で横ばいとなっており、質はともかく量的な面だけで言えば、高等教育機関から社会に輩出される理科系人材全体の絶対数は決して減ってはいないのだ。いや、少子化の進行を鑑みれば、むしろ増加しているともいえるだろう。また、日本の子供の理科や数学の学力は国際的に見ても高いといわれている。しかし、いずれにしても少子化で子供の絶対数が減少傾向にある以上、理科系人材の育成と確保は日本の強みである“ものづくり”文化を支えていくためにも、国家レベルで取り組むべき課題であることは間違いないだろう。
日本のものづくり企業も積極的に理科・科学体験活動を支援・協力する動きをしており、各地で子供が実際にモノに触れ、科学・実験への興味を体感できる催しが各地で行われている。
とくに、日本の電子部品の大手企業が集まる京都ではその動きが活発で、京都市伏見区の京都市青少年科学センターでは、京都市教育委員会の依頼を受けて毎年、京都の企業が持ち回りで製品を用いた子供向けのデモ機を展示している。2014年は京セラ、15年はオムロン、そして今年はロームが担当し、「LEDが切り拓く新しい未来」という展示を行った。また、ロームは8月28日(日)、栃木県子ども総合科学館でも、同社の超省エネマイコンボード「Lazurite Fly」を用いたデモ「ORIZURU」の展示を行っている。
理科離れの原因には「難しい」という先入観もあるのではないだろうか。子供たちが展示などを通して、楽しく理科や実験に興味を持つことができれば、日本の“ものづくり”の未来も明るいかもしれない。(編集担当:藤原伊織)