スマホアプリが不眠症を治療する

2016年09月25日 20:10

 日本人の5人中1人に睡眠障害の疑いがあり、睡眠障害による日本の経済損失は年間3.5兆円に上ると試算されているという。不眠症は抑うつ症状などの精神疾患や、高血圧症、糖尿病のリスク因子となることが知られており、適切な不眠症治療とその予防は種々の疾患リスクを抑えるとともに、経済的観点からも生産性向上を考える上で重要な課題である。

 不眠症に対する治療法としては、米国国立衛生研究所の指針では認知行動療法が第一選択とされ、安易な睡眠薬の処方は依存形成などの副作用につながるため控えるように警鐘が鳴らされている。

 一方、日本における睡眠薬の処方量は先進国の中で群を抜いて多く、睡眠薬として用いられるベンゾジアゼピン系薬剤の人口当たりの処方量は米国の約6倍に上ることが国連の国際麻薬統制委員会から指摘されてきた。厚生労働省も2014年度からベンゾジアゼピン系薬剤の多剤処方時の診療報酬を改定し、処方減に取り組んでいる。薬剤に依存しない不眠症の治療法の普及は、疾病リスクの低減や生産性向上につながるとともに、治療法の選択肢を広げる効果が期待されているという。

 これを受け、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機(NEDO)の起業家候補(スタートアップイノベーター)支援事業において、サスメドは認知行動療法に基づいた不眠症治療用スマートフォンアプリの臨床試験を、公益財団法人神経研究所附属晴和病院と社会医療法人芳和会くわみず病院と連携して、9月から開始する。このアプリの有効性を検証することで、薬剤に依存しない認知行動療法による不眠症治療の普及を促進するという。

 サスメドは日本における睡眠薬の使用量が諸外国に比べて多いという問題意識のもと、DeSCヘルスケアと共同で、非薬物療法である認知行動療法のアルゴリズムを用いたスマートフォンアプリの開発を行い、その睡眠改善効果を検証する。サスメドは主にアプリ全体の製品企画と医学的知見の活用を担い、DeSCヘルスケアはユーザーインターフェースおよびプログラムの開発を担当する。

 さらにサスメドでは、治療用ソフトウェアを医療機器として製造販売するために必要な申請手続きを行い、将来的にこのアプリが医療機器として不眠症治療に利用されることを目指す。

 なお、事業における最初の取り組みとして、公益財団法人神経研究所附属晴和病院および社会医療法人芳和会くわみず病院と連携し、アプリのプロトタイプを用いた睡眠改善効果検証のための臨床試験を9月から開始する。(編集担当:慶尾六郎)